ジタンはなぜかリンドブルムを歩いていて、久しぶりという感じがした。ちょっとだけ外に出ていた だけなのにと、自分でも不思議に思っていた。何が原因なのかは分からない。 ジタンはリンクを見た。こんな小さな少年が世界を救うために尽くし、旅をしている。ジタンがリン クくらいの時は、まだまだ遊ぶことなどに没頭していた頃である。もしかしたら、盗賊の訓練もし始め ていたかもしれないが。 「そういえばダガー姉ちゃん、女王さまなのに普通に歩いていても大丈夫?」 ダガーがそうね、と考えながら答えた。クラウドは街並みを眺めている。少し後ろを気にしている様 子だったが、ダガーは気にしなかった。 「前に旅してた時も大丈夫だったから。なんでみんな気付かないのはわからないけど」 どうやら本人もわからないと聞いて、ふーん、とリンクは言うしかなかった。その後、ジタンは疑問 に感じていたことをリンクに訊いた。 「なあ、どうしてリンクはダガーのこと『ダガー姉ちゃん』って言うんだよ」 「え・・・だめ?」リンクは少し戸惑った。ダガーが優しく姉のような感覚で接してくれるので、自然 となってしまったせいなのか。 「いいじゃない、別に」ダガーはそう言ってからリンクの方を見た。「私もリンク君は弟みたいな感じ に思って話しかけてるし」 「はあ・・・」ジタンはため息をついた。たまには自分もそんなふうに接してもらいたい。そんなジタ ンをクラウドは「嫉妬してるな」、などと思いながらジタンの事を横目で見ていた。 でもよく考えればダガーは独り身で、両親もおらず、兄妹もいない。そのため、王位継承者はガーネ ットのみだった。一年前に勃発した召喚戦争で戦死した母、ブラネに代わりダガーは女王に即位した。 そう考えると、さびしかったのかもしれないとジタンは思った。 「そういえば、エーコってシドおじさまの所に養子に入ったのよね」 ジタンは少しボーッとしていたが、我に返り質問に答えた。 「ああ、そうそう。エーコもいい暮らししてるんだろうなあ」 「あら、子供の頃の王族の暮らしも大変なのよ。みっちり勉強させられるし、街を歩いたりする機会も 少なくなってしまうし」 それを聞いてリンクが驚いた。 「えぇ!?ほんと?」 リンクの想像していた王族の暮らしは、好きな時に遊んで好きな時に食事ができたりするのかなあと 夢に見ていたが、全然違っていたので少しがっかりした。その時、ダガーにいきなり驚く事を訊いてき た。 「リンク君、アレクサンドリアで暮らしてみる?」 ジタンが少し焦ったのは言うまでもない。 「そっ、そんなのずるいだろっ」 「ジタンはだまってて!」 「うぅ・・・」ジタンがひるむ。 リンクは冗談半分で訊いてるのかなと思っていたが、少し考えて答えた。 「う〜ん。とりあえずこの事が片付いてから考えるよ」 そう、とダガーは頷き、再び前を向いて歩き始めた。どうやら本気だったようだとリンクは察した。 一行はいつの間にかリンドブルム城行きのエアキャプ駅に到着していた。 エアキャプでリンドブルム城まで行き、そこからは大公の間まで歩きである。それでも階段は少なか ったので、楽であった。 大公の間の扉を開けると、そこには一人子供が立っていた。エーコではない。ダガー達は少し意表を 突かれたが、ダガーはシドに挨拶をした。 「シドおじさま、お久しぶりです」 「おぉ、ガーネットか。久しぶりじゃのう。ん?なぜ君がここに?」 「ちょっとした事情で。船でジタンとリンク君に偶然出くわして」 「そうであったか。あの金髪の青年は・・・三人目の勇者か?」 ダガーはうーん、と上の方を向いて頬に人差し指をくっつけた。 「そのことに関しては詳しく知らないんです。後でお話していただけますか」 「ああ、いいとも。それより、どうじゃその後は」 ダガーはまだシドの前に立っていた金髪の少女が気になったが、会話をつづけた。横目で見ると、リ ンクがかなり驚いた様子だった。いったい何なのであろうか。 「シドおじさまの救援もあって、今はだいぶ街が復興できています。本当に感謝しています。・・・お じさま、あの女の子は・・・?」 シドは何かを思い出したかのように、おお、と言って続けた。 「実は、リンク君と同じ出身国・・・なんじゃったかのう」 「確か・・・ハイラルです」 「そうじゃ。ハイラルという国からリンク君を探しに来たというのじゃが、よく一人でくるものじゃ。 王家の紋章を持っていたのでな」 「それにしてもよくここがわかったね、ゼルダ」 「ええ。ハイラルであなたが港へ向かうのを見た人をいて・・・」 少し二人の会話を聞いていたジタンが口を開いた。 「で、ゼルダ・・・でいいのか?」 「あ、はい」 「何で突然リンクに会いに来たんだ?理由があるんだろ」 「ええ・・・。私は世界に危機が迫ると、それを感じ取ることができる事ができるんです」 ジタンが驚く。共にクラウドも少し驚いていた。 「へぇ・・・、すごいな。それでリンクに助けを求めたんだな」 「はい。そうなんです」ゼルダは頷き、リンクの方を見た。 ここでヒルダがやってきた。シドが、丁度いいのでここいらでここまであった出来事をまとめようと 提案した。しかしそこでクラウドが止めた。 「なんだよ、クラウド」 「・・・いい加減出てきたらどうだ、ティファ」・・・・・・すると数秒後、階段のかげから女性が現れた。黒の服に身を包み、ロングヘアで、手に はグローブのようなものをはめている。 「バレてたかあ。やっぱり」 ジタンがその時、興味深そうにクラウドに質問した。 「なんだなんだ、彼女か、おい」 「そんなんじゃない」 「へぇ〜」 少しデレデレしているジタンを見てダガーが少し苛立ちを覚えた。小声でジタンに話しかけた。 「何デレデレしてんのよっ」 「ん・・・?ああ、悪い」 「あなたは・・・?」 そのティファという女性は振り返った。腰のあたりまで伸びた髪が揺らいだ。 「私はティファ。ごめんなさい。どうしても気になってついてきてしまったの」 それを聞くと、ダガーはティファに話しかけた。 「私は・・・ダガー。ジタン達の旅に協力してくれるん・・・ですよね?」 「ええ。ここまで来たからには・・・。知らんぷりはいけないでしょう」 「さあ、全員そろっていいタイミングじゃ。まとめるかの。ジタン、頼む」 「ああ、わかった」 ジタンが話し始めようとした瞬間だった。ぱっと光が差し込み、美しい女性が現れた。 「あ・・・・・・!」 リンクは不意に声が出た。あの光の女神である。 「私は光の女神・・・。リンクよ、よく集めてくれましたね・・・」 「えっと・・・うん」リンクは短く答えた。 と、ここでエーコがやってきた。ジタン達が帰ってきたと聞きつけ、全力ダッシュで駆け抜けてきた ところだった。エーコもかなり意表を突かれていた。 「リンク、ジタン、クラウド。そしてその旅の仲間の方々。あなたたちがこの世界の運命のカギを握っ ています。それでも、協力していただけますか・・・?」 全員、ばらばらにだったがうなずいた。クラウドは少し興味があるようで、しっかりと女神を見てい た。 「ではお話ししましょう。次への道を・・・」 「次への道って?」 訊いたのはリンクだ。 「大昔に封印されし神殿。遥か天空に浮かぶ塔。敵の本拠地はそこにあります」 「どういうことだ。敵の本拠地がふたつあるのか」クラウドが訊いた。 光の女神は、いいえ、と言って続けた。 「大昔の封印されし神殿・・・『海底神殿』は、遥か天空に浮かぶ塔、『大空の塔』へ向かうための神 殿。敵の本拠地とは、『大空の塔』なのです」 ジタンが腕組みをしながら言った。 「『海底神殿』・・・『大空の塔』か。だんだん話が大きくなってきたな。で、その神殿の封印を解か なきゃならないんだろ? はいどうぞなんつってその塔に通してくれるとは思えない」 「ええ。その通りです」 即答しやがった、とジタンは少しがっくりした。 「もう一つの鍵が必要なのです。一つの鍵はあなたたち三人。もう一つの鍵は、トライフォース、聖の マテリア、そしてクリスタル。それらを海底神殿に集結させるのです」 全員の顔つきが変わった。すべて耳にしたことのある物だが、聖のマテリアという存在については、 クラウドとティファは初耳だった。 「聖のマテリアとは、『忘らるる都』におさめられている、聖なるマテリアです。ただし、注意すべき ことがあります」女神は少し間を開けて言った。「そのマテリアには、クラウド、あなたしか近づけま せん」 「・・・?・・・・・・なぜだ」クラウドが驚いて訊く。 「わかりません。ですが、あの空間はあなた以外のものを受け入れることができないのです」 「そうか・・・よくわかんないけど。わかったよ」 ちょっと間があった時、エーコが初めて話しかけた。 「じゃあ、その三つの物を集めれば、その・・・大空の塔だっけ? に行けるってわけ?」 女神はなぜか少し笑顔になった。 「はい」 ティファがよし、と言って、 「じゃあ、頑張って集めるわ!」 女神が再び笑顔になった。そして全員を見渡してから言った。 「頼りになる方ばかりで安心でした。では、私はこれで・・・」 そして女神はあっという間に消えてしまった。一同は幻覚じゃないよな、と思っていたが、全員見え たとあってさすがに本物だろうと信用した。 「クリスタル・・・か、心当たりあるか、エーコ、ダガー」 「ぜーんぜん」エーコは首を横に振った。 「私も・・・そうね、聞いてないわ」 ジタン達が悩んでいると、ヒルダが助言、というべきなのだろうか。というか、答えをくれた。 「クリスタルなら、この近くの塔に保管してありますよ」 ジタン達はえっ、と声を漏らす。 「本当か? それは」 「ええ。しかし塔の扉はかたく閉ざされています。螺旋階段と言って、少し高い塔です。これを」そう 言ってヒルダは、小さな鍵を差し出した。ジタンはそれを受取り、しっかりと握った。 「サンキュー」 一方、聖のマテリアを取りに行くのは、女神が『クラウドしか入れない』と言っていたので、クラウ ド一人で固定になった。 そしてトライフォース。リンクとゼルダによれば、場所はひとつしか無いという。 「もちろん、時の神殿。だよね、ゼルダ」 「おそらくそうです。ふたたび時の扉を開けねばいけませんね」そうして、メンバー決めが始まった。まずは螺旋神殿だ。何とエーコも行きたがり、シドが止めたが きかなかった。ヒルダも「いいじゃないの」などとと言っていたし、仕方なくシドは認めることにした。 エーコはジタンと一緒がいいらしいので、ジタンとエーコは決定した。 「何でオレとがいいんだ?」 「えー、だってぇ」エーコが少しモジモジしていた。 それから螺旋神殿で、螺旋というだけあって、階段が多いんだろうと思った一同は、体力がある方が いいと踏み、あと一人は体が鍛え上げられているティファになった。 「よろしくね、ジタン、エーコ」 「ああ、ピンチの時は頼むぜ、ティファ。っていっても、オレは守る立場にいるんだけど」 「うん。よろしくー!」エーコが元気よく言った。 続いて、時の神殿。もちろん余ったメンバーの、リンク、ゼルダ、ダガーだ。 「ふー、ハイラルに戻れるのかあ」リンクはぶっきらぼうに言った。 「あら、目的はトライフォースよ。気を抜かないで、リンク」ゼルダが助言した。 どうやらメンバーが決まったようだと思ったシドは、すぐ行くのかどうか訊いてみた。 「じゃあ、さっそく行くのか?」 「いや、今夜はここで休もう。ベッドはたくさんあるだろ?」ジタンも少し疲れていたようだ。 「賛成!僕も休みたい」 「・・・そうだな、俺も」リンクとクラウドも立て続けに言う。 シドが、ふむ、と少し考えている様子だったが、すぐに許可した。 「わかった。すぐにベッドと夕食を用意させよう。それと風呂もな。あと、このあとジタン、ガーネッ ト、ティファ君、クラウド君は下の会議室に来てくれ。ヒルダも頼む」 わかりました、とヒルダは答えた。ジタン達も承諾した。 「あたしたちはどうすればいいの?」エーコが父に訊いた。 「そうじゃのう、エーコ達は自由に遊んでいてよいぞ。客室や庭を使うといい」 それを聞いたリンク、エーコ、ゼルダは駆け出して行った。 「いこうぜ!」 王女であるエーコとゼルダも、こういう時はおてんばであり、子供らしく、リンクもいつもより子供 らしく見えた。 「よし、ではさっそく会議を始めよう。これまでにあったことを、改めてまとめる」シドがそう言うと、 玉座の台ごと下の階に下りて行った。知らなかったクラウドとティファは驚いていた。 ジタン達が下の会議室に入ると、髭を生やした人物がいた。ジタンはそれが誰か初めはわからなかっ たが、すぐに思い出した。 「確か・・・あ、文臣オルベルタさん・・・だっけ」 「お久しぶりです、ジタン殿、ガーネット女王」オルベルタは深く頭を下げた。 「こちらこそ、お久しぶりです」ダガーもお辞儀をした。そうしてから、クラウドとジタンに紹介した。 「こちらは、文臣オルベルタさん。昔からリンドブルムにシドおじさまに仕えている方です」 「初めまして、ティファです」敬語を使っているティファを変な目でクラウドは見ていた。 「こちらこそ、初めまして。そうかしこまらなくても結構ですよ」 「あ・・・はい」ティファは頬をかいた。 ここで、退屈そうにしていたシドが呼びかけた。 「のう・・・、会議・・・始めてもよいか?」 あっ、と一同は気づき、テーブルについた。 「さあ、じゃあまずは・・・・・・」 かくして会議は始まり、終わったのは約一時間後であった。全員少し疲れてしまったのは言うまでも ない。