「さあ、小僧。死ぬ前に何かメッセージを聞いておいてやろう」
 ガノンドロフは完全に勝利していた。2人もの戦士が重傷を負ってしまっては、もうこの世界は破滅
に導かれてしまうだろうと、リンクとジタンはあきらめていた。
「う・・・・・・」リンクはもう声も出せなかった。意識が遠くなっていく。その時、ジタンがかろう
じての力で、ガノンドロフの足をつかんだ。
「殺すなら・・・俺を・・・ころ・・・せ・・・。リンクはまだ・・・子供・・・なんだ・・・。」
 ガノンドロフは蹴りあげ、ジタンを吹っ飛ばした。
「黙っていろ、しょせんは作り上げられたジェノムめ・・・。第一貴様は異世界"テラ"の者のはず。な
ぜ人間の敵であるお前が、小僧の味方をする?」
「テラ・・・ジェノム・・・そんな事は・・・関係ない・・・」ジタンは少しずつ血が流れ出ている腹
を押さえながら続けた。「俺はこの星で・・・育ったんだ・・・」
「ふん・・・。所詮は下等生物か。さあリンク。世界に終りを告げるがいい」
 ガノンドロフは剣を振りおろした。リンクはもうダメだ、と思い、目を閉じたが、その一瞬に、ガノ
ンドロフが斬りかかられるほうが速かった。

 この世界がテイシしたかのように思えた一瞬だった。

「ガノンドロフ・・・。皇帝の剣をあやつり、世界を闇へ導いた男・・・」
 ガノンドロフの背後にいた謎の男は剣を支えながら言った。かなり大きな剣であった。
「きさま・・・誰だ!」
「ここでは名前は伏せておこう。・・・そうだな、三人目の勇者、とでも言うべきか、それとも」青年
は剣を持ち直した。。「いいや、やめておこう」
「ぐっ・・・」
 ガノンドロフはリンクと戦うことに集中し、別の気配に気づけなかったのだった。ガノンドロフは少
しよろめきながらも、かろうじて立っている状態だった。
「チッ・・・。もうすぐ使命を果たせるところだったのだが・・・?そうか、貴様がクラウドか・・・」
 金髪であるクラウドは剣を背中にくっつけた。磁石が付いているらしい。
「速くここから出るんだな。その傷で俺と戦っても勝てないはずだ」クラウドはリンクに寄った。「大丈
夫か?」
 だが返事はなかった。しかしまだ息はあるとクラウドは確認した。
「おい、こいつを・・・」クラウドはジタンに呼びかけたが、ジタンも傷を負っていたので途中で言葉を
切った。
「な・・・んだ?」ジタンは力を振り絞って立った。
「いや、悪かった。いい」クラウドは静かに言った。「さあ、ガノンドロフ、どうする?」
「くっ・・・!」ガノンドロフは苦しみながらも、なぜか手を上にあげた。「今日のところは引いておい
てやろう・・・。だが貴様らもいずれ死ぬ運命なのだ・・・」
 ガノンドロフは消えてしまった。あのクジャのようだと、ジタンはなぜか不思議に思った。


 クラウドはダガーを助け出し、二人をダガーが回復魔法で治療した。魔法力を豊富に持っていたダガー
は、二人の傷をすぐに治すことができた。もう夜であった。
「サンキュー、ダガー」ジタンは気軽にお礼を言いながらも、感心していた。
「ありがと、ダガー姉ちゃん」リンクはダガーに笑顔で言った。
「大丈夫。これくらい楽勝よ」しかしダガーは少しため息をついた。「でもあの部屋、居心地悪かったか
ら、少し気分が悪いけどね」
 クラウドが宿屋の窓の外を眺めながら言った。
「もう夜だな。ここで休んでいくのか?」
 リンクが応答した。リンクも窓に近づいた。
「もちろん。公演が見れなかったのが残念だけど・・・」その時リンクが、あっ、と思い出して言った。
「なんでクラウドは、僕達があそこにいるってわかったの?」
「呼び捨てか?」クラウドは少しリンクの顔を見ながら言った。
「え・・・?あ、ごめんなさい」
「うそうそ。大丈夫さ。逆にさん付けされる方が嫌だからな」クラウドが初めて少し笑ったところを見て、
ジタンは意外そうな顔をした。
「実は騒動をたまたま近くの喫茶店で見かけてな。気になるからついていったんだ。そうしたらあんな場
面になって、俺が助けたんだ」
「ついてきてたんなら言ってくれれば良かったじゃないか」ジタンは少し顔をしかめた。
「バーカ。あの後にすぐに仲間になりたいって言ったら素直に入れてくれたか?たぶんガノンドロフの仲
間だとか言って受け入れなかっただろ?」
「あ・・・・・・まあ、そうだなあ」ジタンは頭を掻きながら言った。
 リンクは大きなあくびをしながら、ベッドに戻った。どうやらかなり眠いらしい。リンクはテーブルに
あったチョコレートの菓子に手を伸ばし、袋を開けて食べた。少し破片がベッドに落ちた。
「あ、リンク!」ダガーが大きな声で呼んだ。
「何?ダガー姉ちゃん」
「食べたらちゃんと歯磨きなさいよ。もう夜なのに・・・」ダガーは母のように言った。どうやらリンク
の事を自分の子供のように思っているようだった。
「うん。わかってるって」リンクは時計を見た。夜の10時だった。
「私、もう寝ようかな。着替えてくる」そう言ってダガーは洗面所に姿を消した。
 ジタンもリンクが食べているチョコレート菓子を手に取り、食べだした。
「んんー、うまい」ジタンはわずか一口で食べてしまった。「俺も寝ようかな」

 1時間後には全員眠りにつき、ぐっすりと眠った。


 小鳥が鳴き始めていた。ダガーは一番に目覚めた。時計を見るともう八時だった。日課としては七時に
起きているのだが、かなり遅れていた。
「みんな起きてーっ!」ダガーは大きな声で呼びかけた。
 しかし三人は全く動かない。かなり熟睡しているようだった。ダガーは、もう、と少しいらだち、最初
にリンクを起こしに行った。
「うう〜。早いよダガー姉ちゃん」リンクはしぶしぶ起きた。
 あとの二人もリンクのようにしぶしぶ起きた。しかし笑いが起きた。クラウドの寝ぐせが少しひどかっ
たからである。
「あははっ、クラウド、寝ぐせすごいなあ」
 クラウドは無言であった。しかしカチンときている様子でもあったが、耐えているというか、動じてい
なかった。
「さあさあ、準備しようぜ」ジタンはまあまあといった感じで言った。
 四人は荷物をまとめた。というか、荷物は全然無かったのだが。宿屋の一階でチェックアウトを済ませ、
代金はダガーが支払った。そうしてから一行はルークスの港へ向かった。もちろんダガーは偽名のパスを
見せた。
 しかしクラウドは、フリーパスポートを持っておらず、手続きが必要と踏んでクラウドは面倒くさそう
にしたが、係員からフリーパスポートを持っている人がいれば何人でも乗船できると聞き、ジタン達は安
心した。
 この船は普通運航なので、リンドブルムへ着くには数時間かかることになった。ちなみにジタン達がル
ークスタウンに来た時の船は快速運航だった。まあ電車で言うと快速列車である。
 船室では、四人が今後について話し合っていた。しかしクラウドは、イスに座らず、壁に寄りかかって
いる。
「ここ最近で、かなりいろいろなことがあった。それをまとめてみよう・・・と思う」ジタンの目は真剣
であった。「まずはリンク、お前が最初に知ったんだよな?」
「うん」リンクは頷き、少し唸った。「う〜ん、そうだ。ハイラル平原で、突然女神が現れて・・・世界
がまた危険になったって教えてくれたんだ」
「そしてリンクが突然リンドブルムに現れる。ヒルダから女神と邪神の話を聞き、一体であったと知って
から、シドのおっさんを助けるときにクジャと会い、それで本当に危機が迫っていると再確認できた」
 ここで、クラウドが少し気がついた感じで言った。
「一体であった? その光の女神と・・・なんだった?」
「暗黒の邪神」ジタンがすぐに答えた。
「ふーん・・・そうか」クラウドは再び壁にもたれかかった。
「何だよ」ジタンが訊く。しかしクラウドは答えなかった。
 ジタンはクラウドのクールっぷりに少しイライラしていたが、我慢していた。しかしクラウドも、クー
ルになりたくてなったわけではないのであろうと、ジタンはなぜか理解していた。
 微妙な空気になっていたが、ダガーが「話を進めましょうよ」と、切り替えた。リンクが口を開いた。
「で、ルークスタウンに来て、あの事件が起こったんだよね、ジタン」少し物静かになったジタンに問い
かけた。
「・・・ああ、そうだ。ガノンドロフという男が現れ、ダガーをさらった。俺達はクラウドのおかげで助
けられ、」ジタンは少しクラウドを見たが、クラウドは無反応だった。「今こうしてダガーも無事であり、
リンドブルムに帰ることができている、ということだな」ジタンは締めくくった。
 リンクはふう、とため息をついた。
「どうしたんだよリンク。まだ疲れ取れてないのか?」ジタンが問うた。
「うん・・・、あれだけ戦ったからね」
 するとここで、昼食が運ばれてきた。主食はスパゲッティで、おいしそうなミートソースがかかってい
た。サラダも付き、ゆで卵やレタス、トマトなどがつき、ツナもあった。全員分をテーブルに乗せた後、
船員がデザートとドリンクについて訊いてきた。かなり豪華だなあとリンクは感じた。
「僕はチョコレートで・・・メロンソーダ!」
「俺はそうだなあ、バニラでコーラでいいよ」
 ちなみにチョコとかバニラとは、デザートがアイスクリームだからである。
「わたしは・・・私もバニラで、紅茶でいいわ」
 残るはクラウドである。
「お客様はどうされますか」船員は少し暗そうなクラウドにも動じず訊いた。
「俺はチョコとアイスコーヒーでいい」
 リンクが意外そうな顔をした。
「へー、クラウドって甘党なの?」
「っていうか、寒いのにアイスコーヒーかよ」ジタンが思わず突っ込んだ。


 リンク、ジタン、クラウド、ダガーの四人は昼食を食べた後、気ままに過ごしていた。リンクとダガー
は腕相撲やジャンケンをしていたりして、ジタンはうらやましかった。
 ずっと見ているだけでも気まずいので、ジタンはクラウドのところに行った。
「なあクラウド」
「何だ」
「お前の事を少し教えてくれないか。これから一緒に行動してくれるんだろ?」
「・・・・・・ああ」
「・・・サンキュー、クラウド」
「俺は・・・元神羅カンパニーの一般兵だったクラウドだ。体には特殊な細胞が埋め込まれていてな。そ
のおかげでそこらの兵よりも遥かに強い」
「特殊な細胞・・・ってのは?」
「説明するのは難しいし、面倒くさい」
「・・・そうか」
 ジタンは少し間を置いてから口を開いた。
「その大きな剣は? かなり大切にしているようだけど」
「これは・・・親友の形見だ」
「形見、か」
 船はリンドブルムに到着し、一行は船を下りた。

 そして、起った事を伝えるためにリンドブルム城へと向かった。
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