* リンクは全力で走っていた。早く、早くしなければガーネットが危ない。しかし共に、なぜガノン ドロフがダガーをさらったのか。この前のクジャにしてもそうだ。なぜ飛空挺技術が必要だったのか と、そんなことも考えていた。 敵の狙いは、リンクにははっきり言ってよくわからない。なぜ自分は旅をして、ジタン達と一緒に いるんだろうか。 突如見つかった世界。以前に旅した『タルミナ』とは違う感じがする。 事の発端は、あの女神からなのだ。なぜ今、邪神がよみがえったのか。よみがえったとしたら、な ぜ行動に移らないのか。部下をうまく動かして、世界をものにしようとしているか、それとももっと 他の理由があるのか。 リンクはあっというまに宿泊している部屋に入り、ジタンをたたき起した。 「痛っ!」 つい力が入りすぎてしまったと、リンクはごめん、と申し訳なさそうな顔をして謝った。 「なんだよ・・・ビックリす・・・」 「ダガー姉ちゃんが、さらわれたんだ!」ジタンの言葉も聞かず、早く伝えねばと思って言った。 ジタンは目をぱちぱちさせた。まだあまり理解していないようだった。 「ダガーが誘拐?まさか、タンタラス・・・?」 「ち、ちがうよ、ガノンドロフだ!」 「ガノンドロフぅ?誰だよそれ」 リンクは今までガノンドロフと関わった時のすべてのことを話した。しかし7年後のことはうまく 伏せておいた。 「なるほどな・・・。それはヤバそうだ。まあ目的はわからないにしても、助けに行くのはもちろん だけどな」 ジタンはなぜか少し笑って見せた。 「なにがおかしいんだよう」 「別におかしくは無い。パワーは完全に戻ったから大丈夫だ。さあ、その地底神殿というところに行 こう。早くしないとダガーが危ない」 ジタンとリンクは走ってルークスタウン郊外にある、地底神殿へ向かった。大きな建物なので周囲 の人に訊くまではなかった。 未だに街の混乱は収まっていなかった。ある人は商品を必死に拾い、ある人は怒り、怒りの矛先を 物に向け、激しく叩いているの音もした。恐怖に怯えている人もいた。ルークスタウンは、崩壊とま ではいかないが建物がかなり壊されていた。自分たちがいた宿屋が破壊されなかったことは幸運だっ たとリンクは思っていた。 なぜガノンドロフは自分を殺さなかったのか。今でも不思議だった。あくまで目的はダガーを誘拐 することだった。もしかしたら邪神は自分たちが予想していない、驚異的なことを成し遂げるつもり なのかもしれないとリンクは感じた。 「ここだな。地底神殿っていうのは」ジタンの息は落ち着いていた。 「入ろう。この中にダガー姉ちゃんがいるはずだから」 「よし」 2人は意を決し、神殿内部へと進入した。しかしリンクとジタンは、背後からジタン達を尾行して いる人物がいることには気がつかなかった。 どうやら古代の建造物らしく、いろんな石像、絵画の作品が並べられていた。ここは博物館とかに してもいいのにな、とリンクは思った。 ここは地底神殿という名前なのだが、地中に作ってあったこの神殿が何かで大地が盛り上がり、地 上に押し上げられたのだと考えた。 「ん、なんだこれ」 ジタンがじーっと見る先には、謎の古代文字が記されていた。 「大昔の文字みたいだ。どっかで見たことあるけど・・・あ、そうだ!『英語』だ!」 「英語・・・古代の言葉じゃないか!俺は解読できない」ジタンは途方に暮れていた。 『You should get over a trial if you want to enter here.』と記されていた。その下に小さな さびたボタンがあるが、解読するまでは押すまいと、リンクは必死に解読していた。 「『you』はあなた、でしょ、『should』は、〜すべきである・・・、『trial』は・・・・・・試練、 だと思うけど・・・・・・、ちょっと、ジタンも手伝ってよ」 「ん?・・・ああ、悪い。『if』っていうのは、もし〜ならば、とか、〜とすればっていう意味だと 思うけど。『want』は〜したい、『enter』は入るとか・・・。『here』はここ、だろ。『clear』 は合格、とか・・・」 リンクは改めて前を見た。固い石のカベで閉ざされている。頑張って押してみたが、手首が痛くな っただけだった。リンクは軽く手首を振った。そして突然、リンクはああ、と手を叩いた。 「わかった!つまり『ここを通りたいんなら、試練をクリアしろ』ってことだよ。たぶん」 「・・・それってつまり、だな・・・」ジタンは少し顔をしかめた。 「『試練』ってなんだろ。まあ敵地に進入する時はお決まりのパターンみたいな感じだけど」リンク はため息交じりに言った。 二人とも少し迷っていたが、自分達の力では石のカベは開けれないとし、押してみることにした。 「いいか、押すぞ」 「うん」 ジタンはサビたスイッチを力強く押した。 その瞬間だった。なんと神殿が崩れだし、周りにあった石像などが倒れ、激しい音がした。リンク はしりもちをついてしまったが、ジタンはスイッチがあった柱をつかんでいた。 「わわっ、なにこれ!?」リンクは気がかなり動転しているようだった。 「わからない、とりあえず何かにつかまるんだ!」 リンクは神殿が揺れる中、折れた柱に向かって歩き、つかまった。尚も神殿が揺れているが、その 時、石の壁が崩れた向こうに穴が開いていた。 「ジタン、あれ!」リンクが指さした先には、大きな穴があった。 「あれに入ればいいってことか!?」 「たぶん!行こうよ!」激しい破壊音がしているため、大きな声を出さなければならなかった。 「よし・・・・・・すべりこめっ!!」 リンクとジタンは同時に駆け出し、石の壁が壊れ、その先にあった大きな穴に入った。 「うわーーーーっ!ジタンどこーーーっ!?」リンクはかなり混乱していたが、穴をすべっていると いうことだけは自覚できた。 「くっ・・・速い・・・」 ジタンとリンクはかなりのスピードで穴を落ちて行った。 「なに・・・これ・・・」 リンクとジタンが見たのは、想像を良い意味で裏切られたものだった。 「そうか・・・ここが本当の・・・」 なんと穴から落ちてきた先には、さっきよりももっと古い時代の陶器や剣、銅像がたくさん飾られ た、本当の地底神殿だった。壁画も描かれていて、古い建築物だったんだとジタンとリンクは再確認 できた。 「そういうことか。上の建物はこの地底神殿に繋がるところだったのかあ」リンクは腕を軽く組みな がら言った。 「浮かれてる場合じゃない。ここに敵がいるはずだ」 「クックック・・・やっと来たか」 前から突然誰かがやってきた。ガノンドロフだった。 「ガ、ガノンドロフ!」 「改めて言おうか小僧。ひさびさだな・・・リンク。だが、その小柄な体の時にオレに勝てるかな?」 ジタンがえっ、と言った。 「『小柄な体の時に』・・・って、お前・・・?」 「それは後で話すよ。・・・ダガー姉ちゃんはどこだ!」 「うるさかったからな、少し眠ってもらっている。助けたければ、オレを倒してこの先にいる女王を 助けるんだな」 ガノンドロフは細身の剣を取り出した。ガノンドロフの足の長さと同じくらいの長さで、結構長い 剣だった。ガノンドロフは少し振り回して見せた。 「さあ、来い。なんなら二人でかかってきてもかまわんぞ」 「・・・僕が行く」 リンクは剣と盾を取り出した。ジタンは急いで止めにかかった。 「おい、相手は大人で、かなりの魔力を持ってるんだ!お前ひとりで勝てるわけが・・・」 うるさいっ、とリンクは言い、ジタンを振り解いた。しかし間もなくリンクはあっ、とジタンの顔 を見て言った。 「ごめんジタン。でも僕はどうしてもあいつを倒したいんだ」 リンクの真剣な眼差しに、ジタンは負けてしまった。 「・・・わかったよ。だが、リンク、お前が危なくなったらいつでも俺は加勢する。それだけはいい だろ?」 「うん。ありがとうジタン」 ジタンは戦場から下がった。その瞬間、ガノンドロフとリンクが同時に剣を打ち、戦いが始まった。 剣と剣のぶつかり合いだった。リンクは剣のリーチが短いというリスクを負いながらも、小柄な体 をうまく利用して戦っていた。 「なぜ・・・っ、お前は復活したんだっ!」リンクは剣で戦いながら言った。 「ここに来ているということは、小僧も知っているのではないか?」 「何っ!?」 「邪神様が復活なされた・・・言うならばこの世のすべての悪の頂点を司る邪神・・・。その邪神様 の封印が解かれ、オレは蘇った。オレは選ばれた存在なのだ」 「解かれ・・・た?」リンクはガノンドロフの背後に回り込みながら言った。 「そう・・・。封印が解かれたのだ。何物かは知らんが、それだけはたしかだ」 以前、ヒルダが『封印の魔力が弱まって、封印が解けた可能性がある』と言っていた事を思い出し た。だが、この男が言っていることは恐らくウソではない。 剣で打ち合いをしていたリンクとガノンドロフだが、突然リンクが転んだ。リンクは急いで痛いと ころを押さえた。以前の船での戦いで痛めた手首だった。 「う・・・今になって・・・」 実は船でダガーに塗ってもらった『コキリの樹液』の効果は一時的なもので、完全にケガを治すに はいろいろな物を調合しなければ完全な薬は完成しないものだったのだ。リンクはまさかこのタイミ ングで骨折に戻ってしまうとは計算外だった。 「どうした小僧・・・?そうか、ドラゴンとの戦いのときに痛めた傷か・・・残念だったな」 ガノンドロフはリンクの腹に剣を突きつけた。リンクは骨折の痛みで立ち上がれない。その時、ジ タンが駆けてきた。 「やめろ!おいっ!」 「さらばだ・・・時の勇者・・・永遠の眠りにつくがいい」 ガノンドロフは剣を動かし、リンクの腹を突き刺してしまった。 「うあっ・・・・・!」 リンクの意識はほとんど無くなっていた。自分の血が流れ出ているのはわかった。ガノンドロフは それを確認すると、剣を引き抜き、もう一度刺そうとした。 「さあ・・・とどめだ」 その時、ジタンの蹴りがガノンドロフに命中した。ガノンドロフは吹っ飛ばされ、倒れ込んだ。 「リンク大丈夫か!?」 「う・・・・・・ジタ・・・ン」リンクは必死に手を差し出していたので、ジタンはつかんだ。 リンクの手の力はかなり弱まっていた。 「リンク・・・!くそっ!」 「ジタ・・・・・・うし・・・ろ・・・」突然リンクは遠くを見つめるように言った。 振り向こうとした時には遅かった。ガノンドロフはリンクと同じなようにジタンの腹を剣で貫き、 鋭い音と共にガノンドロフは剣を引き抜いた。血が少し飛び散った。 「ふん・・・・・・単純な奴だ。後ろの気配にも気付かないとは。しかし死んでもらっては困るぞ。 お前は大いにこれから利用されるのだ」 「うっ」 ジタンはその場で倒れこんでしまった。 * ここはどこなのか。"邪神"と人間から呼ばれていた存在は、そんな疑問を少し感じていたが、これ からの計画のためにはそんなことは言ってられない。 二人の悪の存在を蘇らせ、世に送り出した。しかし一人は何も得ず帰ってきた。世界では"クジャ" と呼ばれていた存在だ。自分の魔力が完全に戻っていないことに腹を立てながらも、今ここに、もう 一人の存在を蘇らせようとしている。 "光の女神"が少年・リンクに呼びかけてから数日がたっていた。だがその少年も、もう一人の悪の 存在"ガノンドロフ"の手によって殺めかけられている。ジタンという青年も・・・。だがどちらかを 連れてきてくれれば十分だと"邪神"はガノンドロフに言っておいた。 さあ、魔力は溜められた。もう一人の、英雄と呼ばれた存在を蘇らせようではないか。自分の生誕 の秘密を知ってしまい、それによって人間達に復讐をかけた者・・・ソルジャークラス1st・・・。 『セフィロス』を・・・・。 * 小鳥のさえずりをきき、ゼルダはほっとした感じで城に入った。一人だけでの外出は初めてだった ので、少し心配だったが無事に帰ってこれたことを安心している。 城の門番に挨拶をし、入れてもらった。すんなり入れてもらえたのは恐らくインパが国王に内緒で 話をつけておいてくれたからだろう。城の庭園に入ると、近くに咲いていた花をやさしく抜き取って、 部屋に飾ろうとゼルダは考えた。 ゼルダはリンクがいなかったことを報告しようとインパを探そうと思っていたが、案外すぐに見つ かった。 「姫様、大丈夫でしたか。お帰りが遅かったのですが・・・?」 「ちょっとね・・・」 ゼルダはまだほのかに熱っぽかった。しかし歩くことはできたので、頑張って城まで歩いてきた。 コキリウイルスに一度かかった、なんて言えばインパはもう外出を許してくれないだろうと思い、少 し森で休んだことは言わないことにした。 「コキリの森にはいなかった・・・。ねえインパ、彼がどこにいるかわからない?」 ゼルダは眉をひそめながら言った。かなり困った様子であった。 「そうであろうと思い、こちらで調べました。目撃者を探してみたところ、ロンロン牧場に配達をし ていたポストマンからの情報によれば」インパは少し間を置いた。「緑色の服を着た少年がハイラル 港へ入って行ったのを見たそうです」 ゼルダはえっ、と言葉が漏れた。 「じゃあ、彼は別の大陸に・・・?」 「その日のハイラル港の船の出入りを調べたところ、午前九時三十分・・・。朝一の船が向かった先 の国は」インパはその情報が書いてある紙を取り出し、見た。「リンドブルムという所だそうです」 ゼルダは唖然とした。 「リンドブルム・・・?彼は異国へ・・・?何のために」 「わかりません。しかし、行ってみる価値はあるでしょう」 「・・・インパ、パスポートを用意してくれる?」 「承知しました。では、忘れないよう、これを」インパは、王家の紋章をゼルダに手渡した。 ゼルダは急いで、異国へ旅立つ支度をした。 ←第二章 襲撃−2 第二章 襲撃−4→