*
 船は真っ直ぐと、予定通り進んでいた。
「さーてと、もうそろそろ着くみたいだぜ」
 ジタンが船室のイスをゆらゆらさせながら言った。船が揺れる際にバランスを崩し、イスから落ち
そうになったりしていた。
「じゃあそろそろ外に出た方がいいわね」
「ああ。そうだな」
 ジタン、ダガー、リンクは船室を出て、再び海を眺めていた。リンクはあれがルークスタウンかと、
もう少しで足を踏み入れる大地をじーっと見ていた。
「ねえ、ホントにいるかな。その戦士って人」
 ダガーが訊く。
「さあ?もう引っ越したりしてるかもしれないしな。わからないよ。それにしても、あんな普通の街
に星を救った英雄がいるのか・・・」
「意外と、ああいう場所が好きなのかもよ。まあでも―」
 そこまでリンクがしゃべったあと、船がぐらっと揺れた。ダガーはバランスを崩し、斜めに向いた
船に足をとられ、滑って行き、背中を強く壁に打ち付けてしまった。
 どよめく客たち。その中で、唯一、柵をつかんで立てていたのはジタンとリンクだった。
「ダガーさん!」
 離れた場所から呼んでみるが、返事がない。どうやら意識がないようだと思ったリンクはどうしよ
うもないとあきらめ、とりあえず自分が転ばないようにと注意した。
 ダガーは気絶してしまったようだ。
「クソッ、いったい何なんだ?誰が操縦してるんだ!」
 ジタンは叫んだが、周りの船員も身の安全を確保するのに必死だった。
「ジタン、とりあえず船の揺れがおさまるのを待とうよ!海に投げ出されたりしたら助からないよ!」
「く・・・・・・はやく・・・!」
 しかし、船はなおも揺れる。
「(前にもこんなようなことがあった。今度は・・・?)」
 リンクが思った瞬間、船の揺れがおさまってきた。しかし今度は、微妙な揺れが船客の気分を非常
に悪くさせた。
「なんだ!?止まったと思ったら・・・」
 ジタンが頭をおさえ、座り込む。リンクは大丈夫なようで、周りの状況を確認した。船が大きく揺
れる発端となったものがない。どうしたものかと、リンクは海を覗き込んだ。
 
 その瞬間だった。船が再び大きく揺れ、リンクは海の外に投げ飛ばされてしまった。

                      *

 その頃、なにも知らない青年・クラウドは、しぶしぶと劇団公演に行く準備をしていた。いつもの
普段着に着替え、チケットをポケットにしまい、携帯電話もしまった。
「ふう。じゃあ行くか」
 と、扉を開けた瞬間、ティファがいた。
「あ、クラウドちょうどよかった。今から行こうよ」
「ああ」
 クラウドはティファとともに出発した。少し歩いたところで、懐かしい仲間、バレットとレッド]V
がいた。会うのは本当に久しぶりである。
「よお、クラウド。こんな形で会うとはな」
 相変わらず片腕が銃であるが、もちろんこんな街中でそんな恰好でうろついていてはなのか、袖で
隠してあった。まあそれが正解だろうとクラウドは思った。
「ねえクラウド、劇団タンタラスって知ってた?」
 レッド]Vが訊いてくる。しっぽに火はついたままであったが、今にも消えそうなかんじだった。
「さあ、知らないよ。まあ、期待はあんましてないけどさ」
「なーによ。クラウド行くって言ったじゃない。楽しみじゃないの?」
 まあまあ。とレッド]Vが助けてくれたがクラウドは内心、仕方なく行っているに近かった。でき
るものなら家にいたいし、のんびりしていたい。というくらい今は疲れていた。まあ、仕事ではそれ
なりの給料をもらっているが・・・。
「おい、あとやるまでどれくらいだ?」バレットが町を眺めながらティファに訊いた。
「えっと・・・一時間くらいね。それまでどうする?」
「何か飲める所にはいろうぜ」
「ダメよバレット。公演の時にまだ酔ってたらどうするの」
 ちぇっ、とバレットは舌打ちした。
「じゃ、普通の喫茶店にでもしよう。ほら、あるから入ろう」
 クラウドが勧めた店に一同は入り、公演時間までのんびりすることにした。

                      *

「・・・・・・!?」
 もうダメだ、そう思った瞬間、誰かに手をつかまれた。なんと、気絶していたと思っていたダガー
だった。彼女は肩をおさえて、リンクの手をつかみ、かなり苦しんでいるようだった。
「リンク・・・頑張って!」
 リンクはとりあえず、掴めるところをさがした。だが、見つからない。
「はやく・・・汗ですべりそう・・・」
 その瞬間、スルッと、ダガーの手からリンクの手が離れた。
「あっ」
 直後だった。何かが下から現れたのだ。その物体にリンクは吹き飛ばされ、船のマストにぶつかっ
た。
「ぐっ・・・!」
 手が曲がっている。直そうとしても激痛が走る。自分の体に何が起きているのか。もしかしたら骨
が折れてしまったのかと思う暇もなく、リンクの目の前には、見覚えのある怪物がいた。ドラゴンで
ある。
「貴様か・・・スクイドを倒した奴は」
「・・・・・・?」
 リンクはわからない。
「覚えていないか。お前がリンドブルムに向かう際に乗った船で邪魔をしたあのイカだ」
 あっ、とリンクは言った。確かにあの時、変なイカと戦ったのを覚えている。そのころ甲板では、
うわーっ、とか、船客がかなり騒いでいる様子だった。
「竜?なぜ水から・・・」ダガーは頭を押さえながらかろうじて言葉をしゃべった。
「ガノンドロフ様からの命令でな。その小僧を殺せということだ」
「ガ・・・ガノンドロフ・・・まさか」
「残念だったな、小僧。"あの方"の手によってよみがえったのだ。いや、正確にいえば封印が解けた
と言えばいいのかな?かつて世界に大きな恐怖と苦しみを与えた邪悪なるものたちが・・・。そうい
えば、もう一人蘇り、3人の手下を使って"あの方"は大昔のように世界を恐怖で覆い尽くすつもりら
しい」
 あの方・・・?ガノンドロフ?もう一人蘇る?いろいろ考えが廻ったリンクとジタンとダガーだっ
たが、ジタンが口を開いた。
「3人・・・、・・・?あともう一人は・・・」
「知ってたとしてもお前達に話す必要はない」
 その時、リンクがのろっと立ち上がった。
「僕が相手だ・・・。必ずお前を倒してやる。さあ、甲板に上がれ」
「ほう、やけに威勢がいいものだ。手の骨が折れているんだぞ」
 そう言ってから、ドラゴンは甲板に降り立った。
「やーーーーーーーっ!」
 リンクが剣を鞘から抜き、走って行った。右手は骨が折れてしまったため、盾は構えれなかった。
左利きだったのが幸いした。
「無駄だ無駄だ。バカめ」
 ドラゴンは尾を振りおろし、リンクを叩きつけた。バーンという強烈な音と共に、甲板に穴が開い
た。下にある船室にまで落ちて行ってしまった。
「!・・・リンク!」
「ん?」
 ドラゴンが振り向くと、そこには体がまばゆい輝きにつつまれた人物がいた。
「あれは・・・ト・・・トランス・・・!?」
 ダガーが呟いた。驚きを隠せない。もはや隠す必要などなかった。
「トランス?何だそれは・・・」
「・・・・・・」
 輝きに包まれたジタンがすぐさま短刀を取り出し、ダッシュした。目にも止まらぬ速さでドラゴン
を突き抜けた。
「くらえっ!」
 ジタンの手から魔法弾が放たれた。深い傷を負ったドラゴンは吹き飛ばされ、海の底
に落ちていった。
 歓声が湧き上がる。拍手、口笛、とにかく凄かった。
 
 とっくにジタンの体は元に戻っていた。ジタンはそのまま倒れこんでしまった。
「ジタン・・・!大丈夫・・・!?」
 ダガーが駆け寄ったが、死んでしまったのではなく、どうやら気絶しているだけのようだった。
「う・・・ん・・・」
 下から声が聞こえてきた。リンクの声だ。ダガーは甲板から穴が開いた船室に飛び降りた。
「リンク君、大丈夫?」
「うん・・・なんとか・・・ダガーさんは?」
「私は大丈夫。ちょっと肩を痛めちゃったけど。あっ!」
 ダガーはリンクの手の変化に気づいた。
「やっぱり・・・骨が折れてるじゃない!」
「だ、大丈夫。これを塗ってほしいんだ」
 リンクは服の裏ポケットから、謎のビンを取り出した。
「これは・・・?」
「コキリの樹液。何でも治すことができるんだ。まあでも、骨折くらいが限界かもね」
 ダガーは瓶から樹液を手に付け、リンクの手首に塗った。すると、リンクの手の形が戻り、なんと
すぐさまに骨折が治ってしまった。なんとも不思議な物質だと、ダガーはかなり驚かされた。
「ふう。もう大丈夫みたいだ・・・・・・ジタンはいいとこ取りだよなあ」
「え?」
「だってさ・・・」
 リンクはそのまま目を閉じてしまった。どうやらリンクも気絶してしまったらしい。

 その後、ダガーは二人を船員に運んでもらい、近くの宿屋に入った。医者によると、病院には行か
なくていいらしく、ダガーはホッとした。
「ふたりとも、早く起きないかな・・・」
 2人が起きるのを待っていたダガーは、宿屋の窓から景色を眺めた。ちなみにこの宿屋は3階建て
と、宿屋にしては珍しかった。305部屋であり、3階に泊まることにした。
「上演まで・・・まだあるから大丈夫かな」
 どうやら宿屋前の通りは市場のようで、さかんに声が飛び交っていた。
「・・・うん?」
 リンクが目を覚ました。回りをきょろきょろ見る。
「あれ?ここはどこ?」
「ここはルークスタウンの宿屋。船員の人が運んでくれたのよ」
「そうだったんだ・・・。ジタンは大丈夫かな」
「たぶん大丈夫よ。でも本当にすべての力を使い切ってしまったのね。さっきから起きる気配がしな
いわ」
「ジタンって強いんだなあ」
「リンク君だって十分強いじゃない」
「ははは」
「ねえリンク君、気絶する前に言った言葉の続きって?」
「え・・・?」
 2人が話していたその時、大きな地響きがした。
 直後、悲鳴が聞こえ、物音が激しくなった。
 
「なに!?」
「こっちのほうから・・・聞こえるわ!」
 ダガーはベランダの方を指差した。
「何かが起こった・・・街の中で!」
「ちょ、ちょっと」
 リンクは3階の窓から飛び降りた。これくらいの高さからならギリギリ大丈夫だった。
「待って、リンク君!」
 リンクは周りの状況を確認していた。市場で売られていたであろうリンゴが地面に転がっていた。
その他にも魚や割れたビンの破片、とにかく荒れていた。
「なんだ・・・?何なんだ・・・・・・!?」
 リンクは後ろの気配に気づいた。リンクの目が凍りつく。
「久しぶりだな・・・。いや、今の貴様はまだ7年前の姿か・・・」
「ガ・・・ガノンドロフ・・・どうして・・・」
 リンクが震えていたとき、むなぐらをつかまれ、身動きが取れない状態になった。
「オレはこの瞬間を待っていたんだ・・・!お前を殺し、その周辺の人物を抹殺することを・・・幸
運にもハイラルは再建が進んでいるところだが、リンク、お前がいなくなれば・・・」
 リンクがもがいているとき、横から声が聞こえた。
「裁きの雷を与えよ!『ラムウ』!」
 どこからともなく稲妻がほとばしり、ガノンドロフを襲った。手でつながっていたリンクにはなぜ
か電流が来なかった。ガノンドロフは驚き、手をはなす。リンクはしりもちをついた。
「今のは・・・ダガーさん!?」
「はあっ、はあっ・・・。リンク君、大丈夫!?」
 ダガーはかなり疲れていた。三階からかけ下がってきたせいだろうか。ガノンドロフがのろっと起
き上った。
「面白いことしてくれるではないか・・・アレクサンドリアの女王!」
「く・・・おまえ・・・!」
 ガノンドロフから波動が放たれた。リンクはダガーをかばったが、ガノンの波動はそれをうまくす
りぬけた。ダガーの身を赤色のバリアが包んだ。リンクはその時、7年後での旅でゼルダが誘拐され
るときのことを思い出した。
「ガーネットを助けたくば、この先にある地底神殿へ来い!」
 ガノンドロフはそう言い残し、消え去った。

「はやく・・・ジタンを起こさなきゃ・・・!」
 今の自分の体では、マスターソードも持たずにガノンドロフを倒すことは到底できないだろうとリ
ンクは確信していた。

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