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「ゆう……ごう?」
 サリアがかすれた声で言う。リンクのすぐ後ろにいるので、吐息が少しリンクの耳にかかった。
「そう、融合だ。私は改めてあの女神と融合し、パワーを取り戻すのだ」
 その言葉を聞いたリンクは、動揺しながら邪神に向かって言った。
「そんな事できっこない! あの女神がそんなことに………」
 リンクの言葉が途切れる。
 邪神は空中からリンクを見て、ふっ、と笑い、
「……そうだな」
 とだけ言った。
 ジタンは思った。何だ? あの歯切れの悪い反応は。まだ他に何か……。
「だが計画は進めている」
 邪神はなおも淡々とした口調で言う。
「クジャがリンドブルムに向かっている。そこで人民の命を奪い、融合する際に必要なパワーを集めさ
せる」
 ジタンは思考を止めた。今、こいつ何て言った?
「リンドブルム………くそ、」
 ジタンはダガーを取り出す。
「おい……ジタン、落ち着けっ」
 クラウドが引き止める。強くジタンの肩をつかむ。
「バカかっ! こいつを倒せばクジャも死ぬはずだ………っ」
「まだわからないことがあるだろうが! 邪神から聞きだせることは……」
「もう話すことは何も無い」
 邪神が口を挟む。
「お前達にとって有益な情報はもう無いだろう。さあ、戦うがいい」
「……そうか」
 クラウドはジタンの肩をはなす。首を振り、行けよ、と示した。
 ジタンは走り出し、高くジャンプした。
「馬鹿な奴め……空中に飛び上がっては身動きがうまくとれないというのに」
 邪神は手元に剣をどこからか呼び寄せ、手で握り締めた。
 ジタンが大きく短剣を振る。
「……あんな至近距離で剣を交えてるんじゃあ、うかつに邪神に手を出せないな……」
 リンクは顔を反らして二人を見上げて言った。

 金属音が鳴り響く中、邪神とジタンは絶え間なく攻撃を仕掛け続けている。
「くっ」
 邪神の少し重みがある攻撃にジタンは叩き落とされた。だがうまく着地をし、天を仰いで邪神を見上
げる。
 ジタンを見下ろしている邪神は一人で、
「空中戦はやはり不得意……降りて戦うとするか」
 と呟いた。
 すーっと邪神は地面に降りた。
「もう空には浮かないのか」
 邪神は答えない様子。
 対峙する時間が続いていたが、リンクがサリアに向かって言った。
「下がってたほうがいい」
「え……あ、うん」
 わかった、と言い残してサリアは部屋内にあった柱の裏に隠れ、戦闘の様子をうかがうことにした。


「すぐに決着をつけようか……果たして死ぬのは世界か、私か」
 ガシン、という音をたてて邪神は剣を握り直す。
 リンクはその様子を見て、まだ自分が武器を取り出していない事を思い出し、マスターソードを鞘か
ら抜く。
 クラウドもバスターソードを構えた。
 剣を構えたリンクと、二本短刀をつかんでいるジタンが言い放つ。
「もちろん、」
「お前だ!」
 足音を大きく響かせ、三人が思いっきりダッシュする。
「はああああっ!」
 十分攻撃可能な範囲に近づけた後、大きな声と共にリンクはぐっと剣に力を入れて横に振った。しか
し剣が当たるであろうタイミングの直前―――邪神の姿が消えた。
 三人は止まり、互いに背中を合わせて邪神の姿を探す。気配はあるが、姿が見えない。
「高速で移動してるのか……」クラウドが呟いた。
「え?」リンクが聞き返す。
「俺たちの目には見えないほどのスピードで動いてるんだ、気配があるのはリンクにもわかるだろ?」
「ううん……」
 正直、自分は気配まで感じ取れていない気がした。ここからどこかへ瞬間移動したのかと思ったくら
いである。
 リンクは必死に邪神の姿を探す。どこを探しても見当たらない。どこから邪神がかかってきても良い
よう、剣を構えている。
 突然、トン、と天井で音がした。全員一斉に見上げる。
「くらえっ!」
 邪神が魔力を手中に溜めているのがわかった。ぼんやりと手が光っている。空中を急降下しつつ、邪
神は魔力をなおも溜めている。
「避けるんだ! 危ないッ!」
 クラウドが叫ぶ。その身を引こうとしたが、
「ダメだ……もう遅い………」
 ジタンがなおも天井を見上げながら呟いた。もう間に合わないことを悟ったのだった。
 邪神が手を開き、リンク達に向かってかざした。青く一直線にのびた光が次々と三人に襲い掛かって
いく。
 リンクはすぐさま盾を出し、攻撃をどうにか防御している最中だった。
「耐えてくれ………うっ」
 攻撃の威力が半端じゃない。リンクは盾で受け止めた技の重みでそれを知る。盾までも吹き飛ばされ
ないよう、全力をこめて盾をつかんでいる。
 リンクの耳に誰かの声が届いた。しかし誰かわからない。サリアの声でない事は確かだった。邪神か
ジタンかクラウドの声であるとは思うが、邪神ではないだろう。
 空間が青い光に照らされている時間はなおも続く。
「なんて技だ………ラチがあかない……」
 リンクは盾を持っていない方の手―――つまり左手のマスターソードを握り締め、思い切った行動に
出た。
「跳ね返せッ……!」
 リンクは力の限りマスターソードを振り上げ、天からそそぐ青い光にぶつけた。
 その瞬間、青い光が途絶えた。光のレーザーは予期しない方向へと吹っ飛んでいった。
「………」リンクは無言でその光を見送った。やがて壁にぶつかり、光は消え、すこし壁が崩れた。
 安心したリンクだったが、今度は左手に激痛がはしる。
「さっきの反動で………痺れたみたいだ」
 激痛は左手に留まらなかった。左腕全体までも痛み出した。
 どうにかしてマスターソードと盾をしまい、左手を押さえる。前方を見ると、いつしか降りていた邪
神がいた。
 魔術師が使うような黒きローブをまとい、剣を持っている。戦士なのか魔法使いなのかはっきりして
ほしいな―――と一瞬リンクは思った。
 だがそんな悠長な事を言ってる場合ではない。
 ジタンとクラウドは? サリアは大丈夫か? さまざまな不安を抱えたままリンクは口を開く。
「………」
 だが言葉が出なかった。
 そのリンクの様子を読み取った邪神が言う。
「あの攻撃は私がフルパワーで行った。それをはじき返すとはなかなかの奴だ」
 あれがフルパワー?
「フル…………パワー………か」
 どこからか声がした。これはリンクの声ではない。
 リンクは声の源を探した。
「たいしたことないかもな………お前も」
「……クラウド」
 腕から少し血が流れている。案外クラウドは近くにいた。バスターソードが目の前の床に刺さってお
り、リンクはクラウドが剣で防御をしていたことを悟った。足元をふらつかせながら立ち上がっている。
 ジタンもクラウドのすぐ近くにいた。おそらく、この二人はあの攻撃によって吹き飛ばされ、壁に激
突して多くのダメージを負ったのだろうと思った。クラウドのバスターソードと同じように、短剣・ダ
ガーが近くに突き刺さっている。リンクがジタンの様子を見ているが、ジタンは動かない。
 死んでしまったのだろうか―――。
 リンクの心が恐怖に支配されそうになったが、すぐに消えた。
 ジタンが無言で立ち上がり始めた。しかし………。
「ジ……ジタン、ケガが………」
「へい……き……さ」
 かすれた声がリンクの耳に届く。どう見ても平気そうではない。服が少し破れ、血が流れている。
 立とうとジタンは必死に試みたが、途中でくたりと崩れ落ちてしまった。
「リンク……悪いけどオレは立てそうに無い……お前らだけで……」
「しゃべらなくていいよ」
 リンクが声をかけた。
 この中で一番ダメージが少ないのは自分だ、とリンクは悟る。ん? この中………。
「サリア!?」
 周りを見渡す。あせっていたが、すぐにサリアの姿を確認することができた。
「わたしは大丈夫……でも、ジタンさんが……」
 サリアはジタンに視線を向ける。心から心配している様子だ。だが、下手に動くことはできない。サ
リアは熟知していた。
 複雑な雰囲気が漂う中、邪神が口を開いた。
「さっさと終わらせようか。お前達も早く私を倒さなければいけないだろう?」
 邪神は剣を構える。
「望むとこ、」
 ろだ、と続けようとしたリンクだった。が、左手がもう使い物にならなくなっていた。剣が抜けな
い。
「……どうすれば」
 リンクが立ち尽くしていると、右肩に手が置かれた。一瞬ビクッとしたが、慌てて振り返るとクラ
ウドの姿があった。
「お前は下がっててくれ。俺が戦う」
「えっ!? だけど、クラウド」
「安心しろ。怪我なんてたいしたことないさ。時間稼ぎをするから、その間に腕を休憩させておけば
いい。戦えるようになったら加勢してくれ」
 リンクは言葉を返そうとしたが、その前にクラウドが走り出して行ってしまった。その後、リンク
は邪神の方へ背を向けた。
「ジタン、大丈夫……?」
 リンクはジタンの所へ駆けていき、声をかけた。
「ああ、なんとかな………それより、クラウドに加勢してやれ」
「あいつの技をはじき返した時に腕が痺れちゃって………使い物にならないんだ」
 そうか、とジタンは小さな声で言った。口を閉ざすかと思ったが、そのままジタンは続けて、
「リンドブルム……大丈夫かな」
「何とかなるよ。今はあいつを倒すことに専念しよう」
「はは………専念って言ってもオレは戦えないけどな」
「あ、ごめん……」
 とリンクはジタンに言ってからクラウドの方を見た。あの大型の剣、バスターソードを自由自在に
操って戦っている。
 自分に比べて剣の技術ならやっぱり完全にクラウドが上だな、とリンクは感じた。

「くっ、はっ」
 さすがにこの剣を操るには力が要る。だがこの重量の剣を操れるのは自分しかいない。
 クラウドは時には両手、時には片手でバスターソードを自在に振り回して剣を交えている。
「さすがだな、元ソルジャー」
 邪神も見事な剣さばきでクラウドの攻撃を次々とガードしている。
「俺は元ソルジャーじゃない。一般兵のクラウドだ」
「ふむ……だが身体はソルジャーそのもののはずだな」
「まあな」
 クラウドは手を休めない。もう力が尽きそうだったが、そんなことがあってはリンクとジタン、サ
リアに合わせる顔がなくなってしまう。
「はあっ……はあっ」
 ついにクラウドの息が切れ始めた。それを見計らったかのように邪神はより一層パワーを込め、剣
を振り上げた。
 ガキン、という鋭さに重みが入った音が響く。
「う……」
 クラウドが持っていたバスターソードが飛ばされ、柱に突き刺さる。
「きゃ………っ」
 サリアは思わず声を出しそうになった。目の前の柱の反対側に剣が突き刺さったのだから無理はな
い。
 邪神はクラウドの剣を飛ばした後、自分の剣を床に突き刺した。
「とどめだ、クラウド。所詮お前のスタミナとパワーはそれくらいだったということか」
 クラウドは右腕をおさえている。
「………ダメか」
 また邪神はふわーりと空中に浮き、魔力を溜め始めた。
「ワンパターンのようですまないな。だが私の技といえばこれくらいしかない」
 ふたたび空間が青い光に照らされる。

「またあいつ……あの技を繰り出すのか………」
 リンクはあきらめかけていた。またあの強力な技を放たれた時に、攻撃に耐える自信が無かった。


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