* リンドブルムに残っていた六人は、今後について話し合っていた。ジタン、リンク、クラウドがいなく 「クジャ……なぜお前が」 シドは後ずさりをしながら訊いた。後ろにはヒルダが居る。シドはヒルダをかばうような態勢でいたか らか、クジャが笑みを漏らしながら言った。 「だいじょうぶですよ大公様……あなた達には手出しをしなくてもいい……。というのが上の命令でね。 街の者だけ死ねば十分らしい」 「……わしの質問に答えろ」 「おや? 今のでわからなかったのですか? 僕はリンドブルムを破壊するためにここに来た。それだけ だ」 「何が目的じゃ。住人達に罪はない!」 「さあ? 僕は上の命令に従っているだけですよ。他のしもべ達はジタン達に殺されてしまったみたいだ からね……。部下で生き残っているのは僕だけなのさ」 フフッ、とまたクジャは不敵に笑った。シドはキザな様子を凝視しながら、クジャに言った。 「なぜわざわざ城に来た。目的を果たしたならば帰るがよい」 その言葉を聞いても、表情をまったく変えずに、 「僕を殺さないのかい? この災害をもたらしたのは僕なんだが」 「殺してほしいのか?」 「……フフ……冗談さ。実はジタン達を探しているんだけどね。……どこへ隠したのか訊かせてもらおう か」 クジャの視線が冷たいものへと一気に変化した。殺気が生じている。 そんなクジャに少し押されながらも、シドは冷静に答えた。 「知らぬ。彼らは一時間ほど前に突然消えたのじゃ。三つの秘宝を出したとたん、急にな」 「消えた……か」 「クジャ、ジタン達を探すというのも上の命令なのか?」 「いいや、これは僕の個人的なものさ。リンドブルムを壊滅させた後は死ぬまで自由に行動していいらし いからね」 つまり、とシドは考えた。 この世界には二つの脅威がある。一人は邪神、一人はクジャ。クジャは過去に世界の崩壊をもくろみ、 クリスタルを破壊しようとしたがジタン達に阻止された。 クジャが本来の魔力を取り戻し、邪神と手を組んだときはどうなるだろう。あの光の女神が助けてくれ るのだろうか。 その時だった。 突然、バーン―――という音がした。音源を見ると、そこには扉があった。大公の間の扉が開かれてい る。 「シド!ヒルダ! 大丈夫か!?」 一人の青年が飛び込んで来た。 ジタンだった。 ジタンは目の前にいたクジャを見て、少しだけ驚いた表情をしている。だが冷静さは消えていないよう だった。 「……クジャ?」 「ん?」 クジャが振り返る。再び、見たくない笑顔を浮かべた。 「おや。ジタンか。丁度キミを探していたんだよ…………!」 言いながらクジャは、突然拳を作り、何か力を溜めた後ジタンの目の前に突き付けた。 「吹っ飛べ!」 音もなく放たれたクジャが得意とする魔法弾はジタンの体めがけて進んでいく。 立ち尽くしていたジタンだったが、後ろから聞こえた声で我に返った。 「ジタン、伏せろっ!」 何が何だかわからなかった。しかしジタンは後ろにいた声の主に指示にしたがい、すかさず床を蹴って 横に移動した。 うまくジタンは着地をする。 後ろからも炎をまとった球が飛んできた。クジャの魔法弾とぶつかったが、炎の球はクジャの魔法弾と ぶつかっただけで消えてしまった。しかしそのおかげで、魔法弾は少し小さくなった。 魔法弾はなおも進む。その先にいた少年が声を出した。 「やっ!」 バチッ、という音がして、魔法弾が進行方向を変えて飛んでいく。やがて大公の間の壁へとぶつかり、 魔法弾は消えた。 一連の出来事を見ていたシドとヒルダは言葉を失っていた。クジャが来たときのように。 「ありがとな、クラウド、リンク」 ジタンは、大公の間の段を上ってきた人物に言った。 「一応持っているマテリアを使ってはみたが……威力は小さかったな」 「でもあの魔法弾が欠けたのはよかったよ。いくら僕のマスターソードがあるとはいえ、僕の力でははじ き返せなかったかもしれなかったから」 一時間前に大公の間から消えた人物が、大公の間の扉から現れたのだった。 * 「よし、入ろう」 ジタンが先頭に立ち、リンクとクラウドに言った。 「いよいよだね」 リンクはクラウドに言った。クラウドはリンクの方を見ず、 「そうだな」 とだけ言った。 スカイタワーという名称であるこの塔、そこまで高くは無かった。雲の上にある塔のようで、この時代 の人も見ることが容易ではないだろうと一同は思っていた。 しかし雲の上だと明らかに酸素が薄いはずなのに、身体に異常は一切起こっていなかった。塔の周りが 特殊な構造になっているのかもしれない。 塔の中に入ると、そこにはエレベーターのようなものがあった。少し三人は戸惑っていたが、これ以外 に道がないことを確認するとエレベーターに入った。ボタンは何もなく、人が乗ったらとりあえず動くと いう仕様になっていた。 「シドたちは大丈夫かな……」 「ロフェシーは僕らがいないまま一時間は経ってしまう、って言ってたからね」 こんなジタンとリンクの会話を聞きながら、クラウドはエレベーターについている窓から外を眺めてい た。外を眺めるといっても、見渡す限り青色だった。 鳥でも飛んでいないかと思ったが、見つけることは出来なかった。 これでもかというくらい上昇をしていたエレベーターはやっと止まり、音もなく扉が開いた。 「あ……」 誰かが居た。三人が入ってきたのには気づいていないようだ。 「…………」 最後にエレベーターから降りてきたのはクラウドだった。 「おい――――」 「誰だ!」 その人物は手をかざし、炎を繰り出してきた。突発的に出されたその魔法は、リンクの顔の横を通り、 柱に当たった。 「外したか」 魔法を唱えた人物は一瞬消えたかと思ったらジタンたちの目の前に現れ、口を開いた。 「お前たちは何だ?」 「オレ達は………お前を封印するために来た」 ジタンは真顔で言ったが、どうやら相手にはそれは伝わらないようで、 「知るか」 と言った。 こんな口調をしていたとは驚きだった。しかしそんな事に驚いているヒマはない。 「ロフェシーという人物を知っているか?」 ジタンの言葉を聞いた相手は、少し動揺したようだった。だが表情をすぐに戻してから言った。 「ふん……あの野郎か……己の存在理由も求めずにのうのうと生きている」 「違うな」 クラウドが言った。いきなりしゃべりだしたクラウドを、リンクとジタンは少しだけ意表を突かれた表 情で見ていた。 「生きる理由や、存在する理由がわからないから人は生きているんじゃないのか?」 クールで冷静な声が言う。 「きれいごとをぬかすな」 突然、”そいつ”の腕が動いたと思ったら、クラウドの腕を掴んでいた。クラウドは右手で、背中に磁 石でくっつけてある剣の柄を握った。 「きさまはそれで俺を説得させようとしているんだろうが、そう簡単にはいかない」 クラウドの腕を強く握る、早くも手に血がまわらなくなったのか、手の色がが少しづつ変わっていった。 「くっ……」 クラウドはすぐさま剣を振り下ろした。相手は見事なまでの反射神経により傷一つ負わず、地面を蹴っ て後方へと避けた。 振り下ろした剣を背中にもどしたクラウドは、手をもう片方の手で抑えて数回振った。 「大丈夫かクラウド」ジタンが言った。 「ああ」 だがクラウドはまだ手を抑えている。 「私は邪神と呼ばれている、一人の人間から生まれた存在だ。」 「ねえ、なぜ人を殺す?」 リンクが訊いた。強気に出たつもりだったが、口調は最初だけ何となく普通になってしまった。 邪神はリンクの質問に答えず、手を上にかざした。邪神は目を閉じた。 改めて確認してみると、その空間にはジタン、リンク、クラウド、邪神しかいない。 「おいっ」 リンクが大きい声で言った。その時、天井からどこからともなく剣が降ってきた。邪神の目の前に突き 刺さる。 「存在する意味のない者たちなど、この世にいる価値は無い」 「なんならお前も同じじゃないのか」 ジタンが言う。 「私はちゃんと意味がある。世界に存在する者達を抹殺するという役割」 クラウドは、邪神の一人称が”俺”から”私”に変わったことを見逃さなかった。 邪神は突き刺さっていた剣を抜いた。金属音が少しだけした。片手で持ち、三人に向かって言った。 「さて、戦いを始めよう。私を倒すのが目的なのだろう?」 「なぜ確認するんだ」 「ロフェシーは貴様たちに未来を託したのだな。つまり、貴様たちが死ねばこの世界は私のものとなると いうことだ」 「残念ながら、そうはいかないな」 ジタンはこの時代で手に入れた剣を取り出した。リンクもそれに続けて、剣を構える。 「はっ!」 邪神は大きく剣を振った。衝撃波のようなものが次々と放たれる。 リンクはもう一度強く剣を握り、構えた。 「リンク、いけるか!?」 「大丈夫」 三人に向かってくる赤い色をしていた衝撃波は、三人によってどんどん弾かれていく。 「う………」 「どうした!」 ジタンはリンクを見た。肩の布が少し破れている。あのロフェシーにもらった服だ。 「当たったのか?」 「なんてことない……かすり傷」 ふう、とジタンが安堵の息をついた。その時、クラウドが叫んだ。 「ジタン!」 ジタンはクラウドを見た。 「避けろっ」 ジタンは横を見た。青いレーザーのようなものが飛んでくる。まっすぐ、来た――― 「くぅっ!」 剣を思いっきり振り上げた。しかしタイミングは遅く、バチッ、という音を立てて剣が折れた。 その光線は、ジタンの持っていた剣の柄の少し上の部分に当たり、刃が根元から折れてしまったのだ。 こうなってしまってはもう使い物にならない。 「ちくしょう」 ジタンは柄だけとなってしまった剣を投げ捨てた。そんなジタンを見て、邪神が言う。 「早くも武器を失ってしまうとはな。失望した」 馬鹿にしているような口ぶりだったが、ジタンは動揺せず、 「武器なんてものはいくらでもあるさ」 ジタンは剣を持っていた手を軽く振った。 「だいじょうぶ、ジタン」 心配していたのはリンクだった。リンクはジタンの手を見ている。 「なんとかな。結構効くぞ、あいつの魔法」 するとジタンは突然歩き出し、折れた剣の刃を持った。強く掴む。少しだけじゃなく、かなり痛い。が、 ジタンは言わなかった。 「オレは短剣専門なんだ。これでも十分戦える。もともと長い剣なんてオレには合わないんだ」 邪神がフフッと笑い、 「その余裕、いつまでもつかな?」 邪神が魔法を繰り出してきた。魔法弾のようなものだ。クジャが使うものに性質が似ている。走りなが らはじき返していたリンクはそう感じた。 「(折れるなよ、絶対に……。ここで剣が折れちゃったらもうダメだ……)」 そんなことを思いながらリンクは邪神へ立ち向かう。次々と襲いかかる魔法弾すべてに彼は反応し、見 事にすべて弾き返している。 走って行ったリンクを見ながら、ジタンとクラウドが切羽詰まりながらも会話していた。 「おいっあいつ……だいじょう…ぶ……かっ!?」 使っている剣が短いので、思うように体がついていかない。全方向から魔法弾が来るので、ジタンはか なり不便だった。 「あいつは俺達と違い、子供だからな。小柄な分、敵の攻撃からも逃れられやすいんじゃないのか?」 クラウドはそれ以外しゃべらず、黙々と魔法弾を弾いている。 「しかし、邪神の魔力は何なんだ……!? あんな連続で魔法と唱えられるやつなんか後はクジャぐらい しかいないぜっ」 バチバチッ、という効果音とともに、はじかれた弾は壁に激突していく。 「邪『神』などと言われている奴だからな。俺達よりは多少強くなきゃいけないだろう」 「何だって? 勝てないって言うのか?」 「そんな事は言ってない」 ←第五章 決戦−1 第五章 決戦−3→