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土埃がついている扉を、ジタンが開けようとした。が、触れようとすると扉がひとりでに動きだし、
大きな音をたてながら上方向へ移動した。自動ドアのように。少しジタンは動揺しながらも、三人に、
「行こう」と声をかけてから進んだ。
ジタンを先頭に警戒しながら進む三人だったが、クラウドが疑問を抱き口を開いた。
「それにしても入口の仕掛けと言い、さっきの扉と言い、なんなんだここは」
「不思議だよね」
「魔法の力でもかかってるんだろ。『マジカルミラー』なんていうアイテムがあるんだから、何があ
っても不思議じゃないさ」
その後も三人は警戒しながら進んだが、結局は特に何もおこらなかった。やがて一番奥の部屋に到
着した。
「この神殿は、縦方向にずっと部屋がならんでるんだな」リンクは入ってきた扉をちらりと見てから
言った。
「おい、あれ」クラウドがグローブで包んだ指でさして言った。
「………あれか」
三人の予想通り、奥に部屋が無い部屋、つまり最後の部屋には鏡が置いてあった。鏡は独特な光を
放っていた。まるで自らが光を出しているかのようだ。
ちなみに地底神殿内部は、何らかのパワーによって明るさが保たれていた。ロウソクもなければ、
電灯などももちろんない。
ジタンが一人歩きだし、鏡を取ろうとしたが、クラウドが止めた。
「待て。何か罠があるかもしれない。安易に取らない方がいいんじゃないのか?」
少し間があってから、ジタンが振り返った。
「……でも、これを取って帰らないと世界が終わる。罠があったとしても切り抜けるしかないだろ」
クラウドとジタンは睨みあうかのように、互いを見たまま動かなかった。少し経った後にクラウド
が目をそらした。ジタンはその動作に込められた言葉を受け取った。
ジタンは鏡に手を伸ばし――――――取った。
「―――――――」
ジタンは鏡を取った後、動かずにいた。だが何も起こらなかった。
「……ふう」
安堵した息を漏らしたジタンは、大事にマジカルミラーを持って帰ってきた。デザインは丸く、銀
色をしている。周りに宝石のようなものが散りばめられていた。
「よし、目的は達成だな」
ジタンはクラウドを見ながら言った。睨みつけるような目つきでではない。ジタンが持っている普
段通りの眼差しだ。
「ああ」
「はあ……何も起こらなくてよかったー」
リンクが胸をなでおろす。
「それにしても豪華な感じがするけど、不思議な感じもする……変わった鏡だ」
ジタンは鏡の周りにあった宝石のようなものを見ながら言った。どうやら模倣宝石のようで、合成
されたようなルビー、サファイア、エメラルド、オパールなどの宝石がはめ込まれていた。力を入れ
て取ろうとしてみたが、指が痛くなっただけだった。
「凄いなあ………これが宝石か」
リンクは鏡を覗き込みながら、どんなものなのか確認をした。イメージと少し似てたなと、うんう
んと一人で頷いた。
「これがスカイタワーへのカギか。やけに簡単に手に入ったな」
クラウドはジタンが持ったままの鏡を少しさわってみた。どうやら、普通の金属のようだった。
ここでジタンがよし、と言い、
「もうこんなところには用は無いな。何かが起きる前に、さっさと帰ろう」
リンクとクラウドは同意し、帰路についた。
部屋を出た先には、先ほどとと少し雰囲気が変わっていた。
「ん……? なんだこりゃ」
ジタンが歩いて行った先には、奇妙な太陽の絵が描いてあった。不気味に太陽が笑っている絵だ。
「気持ち悪い。こんなの見てても気分が悪くなるだけだ。先を急ごうぜ」
ジタン達が帰路についてから数時間が経った。
三人はなおも神殿内を歩いていて、ひたすら真っ直ぐ進んでいた。
「……はあ」
三人のうち誰かがため息をついた。額には汗が流れている。
「ちくしょう……もうダメだ、オレ」
ジタンは座り込んでしまった。クラウドは膝をつき、ジタンに声をかけた。
「なあジタン、変だと思わないか?」
「思うさ。当たり前だろ。思わない方がおかしいさ。やっぱり………この神殿には罠があったんだ」
「……あの鏡を取ったせいだろうな」
「ああ。たぶんな。マジカルミラーを取った人間への罠だ」
ジタンは大事に持っていた鏡を置いた。その時、リンクが声を上げた。
「あっ」リンクは、裏向きに置かれた魔法の鏡を指さして言った。
「なんだ?」
「文字で何か書いてある……」
『この魔法の明鏡を外部へ持ち去ることは許されることではない
台座からこの明鏡を取り外し部屋を移動すれば、夢幻回廊へ足を踏み入れることと同義である
夢幻回廊から脱出するには隠された道を導き出し、脱出経路へ向かうが良い
なおこの暗号は、この鏡を持ち去ろうとした者の使用している言語に準じて作らている』
『縦A〜E 横1〜10 (50)
SUN→B7,B2α→B7,B2α→B6,A4α,B9→C1,D1→C1,D1→
B6,A4α,B9→B7,B2α→END』
「ロフェシーに感謝すべきだろうな。この時代の言語を頭の中にインプットしてなけりゃ、暗号文
はともかく説明文が読めなかった」
「これは何だろう。そこが出口なんだろうが……『SUN』って言うのは……?」クラウドが珍しく
首を傾げながら言った。
「まあ待てよ。この暗号文に入る前に、『50』、『縦A〜E』っていうのと『横1〜10』ってい
うのを明らかにしないと。『SUN』とかは後だ」
「50……か」クラウドは顎に手をやり、考えるポーズをとった。「ところで、50と、縦A〜E、
横1〜10っていうのは共通のヒントなんだよな」
「そうであってほしいけどね」答えたのはさっきから鏡をじっと見つめているリンクだった。
「とりあえず、この『縦A〜E』と、『横1〜10』を考えてみよう」
ジタンはなぜか立ち上がり、その場を去った。
しばらくすると、ジタンは先がとがった石を持ってきた。神殿の壁からはがれ落ちたもののようだ。
「縦に……A、B、C、D、E、と」
ガリガリと音を立てながら、ジタンは神殿の床にアルファベットを書き殴った。
「次は横に1、2、3、4、5、6………………よし、書けた」
今度はAの右斜め上から1から10までの数字を書いていった。
「これは縦、横と書いてあるから、何かの表を現してるんだ。………たぶん」
最初は自信を持ったように言ったジタンであったが、まだ自分の答えを疑っていたのか語尾が弱くな
った。そんなジタンを見ながらクラウドがフォローした。
「まあ、その方針で説いていこう。間違っていたのなら間違っていたで、そん時はいさぎよく考えを捨
てれば良い話だ」
「あとは『50』か」リンクは魔法の鏡とジタンがかいた表を交互に見ながら言った。
「50、って言ってもいろいろあるような気がするけどな。ヒントが漠然としすぎている。まあ、ヒン
トがあるだけでもありがたいと思うべきだが……」ジタンが不満の声を上げた。
「100%の半分、50%……関係ないか」リンクはため息交じりに言った。
数分間、三人は言葉を交わさずに、個人で考えることにしていた。というか、そういう感じの空気に
自然になってしまった。
最初に空気を揺らしたのはリンクだった。
「……わかったかも」
リンクは先ほどジタンが使っていたチョーク代わりの石をひっつかみ、突然ひらがなを書きはじめた。
石と床が、ガリガリと再び音を立てる。驚くまでの速さで、リンクは文字を表に書き込んでいった。
「……を、と。よし、できた」
クラウドはその表を見て、不意に笑みを漏らした。
「……そういうことか」
ジタンが最初に書いた表には、誰もが一度は見たことがあるであろう、ひらがな50音表が完成してい
た。
では一応、それを記しておこう。
| | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
| A | あ | か | さ | た | な | は | ま | や | ら | わ |
| B | い | き | し | ち | に | ひ | み | | り | |
| C | う | く | す | つ | ぬ | ふ | む | ゆ | る | |
| D | え | け | せ | て | ね | へ | め | | れ | |
| E | お | こ | そ | と | の | ほ | も | よ | ろ | を |
「ほーう。なるほどなあ」ジタンは感心して、リンクの背中を叩いた。「やるな、リンク」
「はは。たまたま出てきたんだけど」リンクは頭をかきながら言った。
クラウドは鏡を持ち、ふたたび裏面を見た。
「じゃあ、これを当てはめていくのみだな」クラウドはリンクとジタンによって作成された50音表を見た。
「見たところ、『ん』が無いみたいだがそれは使わないのか?」
「たぶん」リンクは床に手をついた時に付いた砂埃をパンパンと叩いてはらった。
「よし、早くやるぞ」
「じゃあ、『B7,B2α』からだ。Bと7は……『み』だな」ジタンが言った。「Bと2……『き』か。
この『α』ってのは何なんだ?」
クラウドが提案をした。
「それは今は無視しよう。まずその『α』がないもの……『C1,D1』か。これは……『う』『え』。
『うえ』か。方向を現しているのか……?」
「脱出経路だしね」リンクがもう一つの組み合わせを見つけて言った。「あ、『B6,A4α,B9』って
いうのがある……えっと…………『α』を無視すると、『ひ』『た』『り』」
ジタンが静かに言った。
「……『ひだり』、か」
クラウドが鏡を見ていた顔を上げて言った。
「つまりこの『α』は、濁点を意味しているということか。『みきα』というのは、『みぎ』、か」
ジタンはクラウドを見て言った。
「つうことは、この脱出経路を書いたようなものに当てはめると……SUN、右、右、左、上、上、左、右、
ENDっていうわけか」
「ああ。この通りに行けばいいんだろう」クラウドは立ち上がった。「だが、謎がひとつ残る」
ジタンも立ち上がった。その二人を見ていたリンクも立った。
「SUN、か」
「訳すと太陽、だよね」リンクは神殿内を見回しながら言った。太陽に当てはまるものを探してみたが、無か
った。同じように神殿を見ていたクラウドが口を開いた。
「なあ、よく思い出そう。この夢幻回廊のことを」クラウドはもう一度鏡の裏を見ながら続けた。「俺達はず
っと部屋を歩いていた。ずっと歩いて、疲れて覚えていないかもしれないが、太陽が床に描かれている部屋が
無かったか?」
クラウドが質問を投げかけた瞬間、リンクが虚を突かれた表情をした。
「……あった。あったよ、そんな部屋。ジタン、覚えてない?」
「………うっすらとは」
「たぶん、その部屋はランダムに発生するんだ。俺はその部屋を何回も見たのを覚えている。ジタンのように
うっすらとだが記憶に残ってる」
「でも、不思議だよ。そんなに前の事じゃないのに、なんでこんなに忘れかけてるんだろう。僕もぼやっとし
か覚えてない」
ジタンは少し険しい顔つきで言った。
「それはここ夢幻のパワーのせいだ。この回廊には何か特別な力が働いている。それがオレ達をこんなに疲れ
させ、脳に蓄積される記憶を削られてる……そんな感じだろ。もし、この脱出経路の暗号に気づかずそのまま
歩いていたら、自分が誰なのかもわからず、力尽きるまでここをさまよい続ける……なーんてことになってた
かもな」
リンクは背筋が寒くなった。
「……じゃあ、記憶が削られないうちに探さないと………」リンクはクラウドを見た。
「ああ。答えを見つけても、それをまた忘れてしまう。はっきり言って運だな。俺達が答えを記憶したまま太
陽の絵が描かれた部屋に辿りつけるか」クラウドは歩きだした。「早く行こう。こうやって話していても、こ
の空間は俺達に悪影響を及ぼす」
ジタン達は歩きはじめた。太陽の絵を求め、部屋を移動していった。
「あった」
リンクが指をさした先には、あの不気味な太陽の絵があった。ジタン達がいた部屋とは違い、上、下、左、
右に扉が付いている。
「よし……さっきオレ達が導き出した答えの通りに行こう」
ジタンが先頭に立ち、部屋を早々と移動していった。『右、右、左、上、上、左、右』と。