* 「うわっ」 意識が消失してから、どれくらいたったのかはわからなかった。 ジタン、クラウド、リンクはある場所からワープしてきたかのような感覚に陥って、しばらく意識が 無くなっていたのであった。 ちなみに最初に声をあげたのはリンクだった。 「・・・・・・あれ? 変わってない」 リンクはあたりを見回した。『過去へ送る』などと謎の声に言われたが、過去に送られたと思えるど ころか、移動していないようだった。 違和感を感じていたリンクであったが、ジタンが何かを見つけたように指さした。 「リンク、こっちを見ろ」 「え?」 リンクが振り返った先には、光があった。 なんと、密室であった場所には扉があったらしく、それが開けられていて光が差し込んでいた。 「どうする、クラウド」 ジタンはあたりを警戒していたクラウドに話しかけた。 「とりあえず外に出ればいい。それから、ここが本当に過去なのかわかるはず・・・だ」 三人は外に出ようとした。だが歩きはじめた時に、リンクがまた違和感を覚えた。 「あれ・・・?」 「ん? なんだよリンク」ジタンは振り返り、リンクの方を見た。 「・・・あーっ!」 「どうしたんだ、少しは落ちつけ。いきなり移動してきたからって・・・」クラウドはリンクを制する ように言った。 「違う違う!武器が・・・なくなってる!」 しどろもどろしているリンクに対して、ジタンは首をかしげながら言った。 「何だって? そんなはずは・・・・・・!」 ジタンは腰のところに手をあてた。だが、愛用している短刀があるはずのところに無い。 「あれ・・・? 本当にないぞ? おい、クラウドは?」 ジタンはクラウドの方を見たが、どうやら確認が終わっていたらしくすぐに答えた。 「俺も無い。なぜ?」 「わからないけど・・・。武器が無いんじゃ困るなあ・・・。これから何がおこるかわからないんだぜ」 ジタンは頭をかきながら言った。部屋を見回しながら、続けた。 「とりあえず、外に出よう。いつまでもこんなところに居れば体に悪いだろうしな」 クラウドとジタンは外に向かって歩き出した。 リンクは訳が分からないまま、ジタン達についていくのみだった。リンクはその場所を見る前に、台 座を見た。 その台座には、何も載っていなかった。 建物から出ると、驚愕の世界が目の前に広がっていた。 意味のわからない文字。石で作られた建物。新聞らしきものを配達している人たち。ある人は果物を 売っている商人らしき人もいた。 ジタンはぽか〜んと口を開けてしまった。何だこれ、と言いたかったが、自分達が住んでいる世界と あまりにも違いすぎてまともに言葉が出ない。 「ここは何だ・・・? 本当にあの声が言っていた過去なのか? 俺は別世界にしか見えないんだが」 クラウドは古代文字のようなもので書かれた店の看板や、走っている子どもたちを見ながら言った。 ここでやっと、ジタンは落ち着きを取り戻して、二人に提案をした。 「過去か、異世界かはわからないけどとりあえず探索してみよう。この様子じゃあ、たぶん言語も違っ てるはずだから多分何もわからないだろうけどな」 「それにしてもすごい街だなあ」リンクは地面を見ながら言った。「この地面、レンガでできてるよ」 ジタンはこの世界に来てからずっと違和感を覚えていたが、ふと新たな疑問がまた浮かんだ。 「・・・・・・あれ? オレ達ってどこから来たんだっけ」 クラウドが腕を組みながら答えた。 「どこって・・・あの変な建物みたいなところの中からだろ」 「おかしいじゃないか。何でその建物がここらに無いんだ」 ジタンの言うとおりだった。ジタン達がいた建物らしき所から出てきて、この街があったのだ。ジタ ン達がさっきまでいたらしき建物は、どこにも見当たらない。ジタン達の背後には何も無く、ただただ 道が広がっているのみだった。 悩んでいる二人に、リンクが声をかけた。 「とりあえず行ってみようよ。ここは僕達の世界じゃないんだ。何が起こっても不思議じゃない」 「う〜ん」ジタンがすこし唸った。「ま、それもそうだな」 かくして三人は、見知らぬ世界の探索にあたることにした。 「それにしてもにぎやかだな。何でだろう」ジタンが市場のようなところを見ながら言った。 「何かあったのかもな。それとも」クラウドは空を眺めつつ、何かを確認しているような顔つきだった。 「これから何か起こるのかもしれない」 三人がのんびりと市場の中を歩いている時だった。突然一人の若者が、道の奥から走ってくるのが見 えた。わけのわからない言葉を叫び、道の奥を指差している。その奥を見てみると、どうやら煙が上が っているようだった。 「あー、ありゃ何て言ってるんだ?」 ジタンは間の抜けた声で言った。 「たぶん"この世界"の言葉なんだろうな、あれが」 「・・・・・・やれやれ」 ジタンは少しうんざりしていたが、道の奥にある煙が気になっていた。リンクも気にしていた。 「ねえ、あそこに行ってみようよ。火事とかじゃないみたいだしとりあえ・・・・・・」 リンクがしゃべっていると、突然後ろから人々が勢いよく駆け出してきた。人々は自分たちと違う格 好をしている三人など目にも止めずに、道の奥へと走って行った。リンクは押し倒され、人ごみに流さ れそうであったが、ジタンが手を掴んでくれていたおかげで助かった。 「あ・・・ありがと、ジタン」リンクはしりもちをついたまま、近くの標識のようなものを見た。走っ ている人のマークに、×印がついている。どうやら、『走るな』、という意味らしい。 そんな標識をことごとく無視して走っていった人たちを見ながらリンクは立ち上がった。ぱんぱんと スカートの汚れを払いながら言った。「ったく・・・。何であんなに急ぐんだろう」 「さあな。まあリンクも提案してたことだし、行ってみようぜ」ジタンはクラウドを見ながら言った。 クラウドは頷き、歩き出した。少しクール感が出ていた。 人々がいない市場は、それはそれで十分不気味だった。物音ひとつせず、飛び交う威勢のいい声も聞 こえてこない。 ジタン達は目の前の景色を目にして、凍りついてしまった。三人とも険しい顔つきで、それを眺めて いる。 倒れている人々。欠けている建造物。地面にあったレンガの道路も無い。ほとんどすべてが灰になり、 煙が上がっていた。 先ほどから起こる出来事に、リンクはもうやめてほしいとうんざいしつつ、疲れていた。突如ワープ した先の場所。そこから何処かへ送り込まれ、そこに広がっているのは見知らぬ世界。そして、このす べてが破壊された街。 受け入れるのにはあまりにも酷いものだった。 辺りを見回してみると、必死で先ほど駆けて行った人たちが救助にあたっている。レンガにはまり、 出られなくなっている人・・・建物の下敷きになっている人・・・。 廃墟と化した街を見ているだけだった三人は、やっと自分たちが全然動いていないことに気づいた。 「・・・オレ達も助けよう!」 ジタンが駆けだし、そこにいた人々に協力して救助にあたった。クラウドとリンクも同じく、救助の 手伝いにあたった。 数時間たった頃だろうか。 街に居た生きている人々を救い出して、病院へ送り届けるのを見送った。文化は違えども、どうやら 病院のようなものはちゃんとあるらしい。 救助にあたっていた三人と先ほどの市場の人々は疲れ果てていたが、その中の一人がジタン達に声を かけた。 「・・・!!・・・!・・・!」 まったくわからない。 「・・・・!!・・・・!・・!」 もちろんわからない。が、その市場にいた人は、ある方向へ指をさした。そうしてから、指で「1」 という数字を作っていたようだった。そうしてから、大きな○を描いていた。 「なあ・・・どういうことだと思う?」 ジタンはリンクに質問した。 「えーと・・・向こうに行って、1番目に見える所に行け・・・・・・じゃないかなあ?」 「・・・・・・よくわからんけど」 ジタンは手で、わかった、とその人を制してからクラウドに判断をゆだねた。 「どうする? クラウド」 「何で俺なんだ」 クラウドは静かに訊き返した。 「いやあ・・・この中で一番年上だし・・・」 ジタンはまた頭をかきながら言った。 「行ってみればいい。何かわかるかもしれないし」 「そうか」 ジタンはその人々に礼を言い・・・というか、そういうジェスチャーをしてからその場を去り、歩き 出した。 「誰がこんなことをしたんだろう。この街はたぶん広かったはずだ。放火とか、そういうのとは思えな い」 ジタンは腕を組み、ゆっくりと歩きながら言った。 「たぶん、この世界には何か・・・悪みたいなのがいるんだと思う。たとえば・・・そう、僕達の時代 の邪神のような」 リンクの意見に、クラウドが付け足しをした。 「それは十分あり得るな。それどころか、邪神に限りなく近いものだと俺は思う」 「何で?」ジタンがクラウドをちらっと見て訊き返した。 「なんとなく、だ」 ジタン達は市場の人の指差した先へ向かう途中で、これからの事をいろいろ話していた。その中で、 話が原点に戻ることになった。 「なあ、何でオレ達がこんな所に送られたんだろう」 一番大事な核心を突いた疑問だった。その疑問に、リンクとクラウドも戸惑った。クラウドが下を 見ながら深く考えて言った。 「俺達をこの世界に送り込んだのは、あそこで聞こえた声のやつの仕業だ。それは間違いない。たぶ んその声の主は、この世界で俺達に何かをしてほしいんだ。まあ、これは推測だが」 リンクが、でも、と言ってから意見を述べた。 「ここは本当に過去なのかな。過去っていうのが本当だとしたら、ここは僕達の世界の昔の時代、っ ていうことになるけど、街が一つ廃墟になる事件なんて、歴史に残ると思うけど・・・。そんなのあ ったっけなあ・・・」 リンクはジタンのように腕を組みながら歩き、考えていた。下を向いて歩きながら、顔をしかめて いる。 ジタンは、うつむいて考えているリンクを見ながら口を開いた。 「ここが本当に過去なのだとしたら、恐らく歴史で古代にあたるところだろ。たぶん。あんな字があ るのは大抵古代だよ」 「それ、本当か?」 クラウドはジタンに強く問うた。 「いや・・・これも推測だけど」 はあ、とクラウドが珍しくため息をついた。というか、ジタン達の前では初めて溜息をついた。少 し間があった後、ジタンが締めくくるように語りはじめた。 「とりあえず、この世界が何であるのか、その選択肢は二つ。過去か、異世界か、というところだろ う。現時点では異世界という確率が高い。が、あの声の主は過去へ送り込む、などと言っていた。だ が、あの声の主が俺達の敵であったとしたら、嘘である可能性もある。それらの事実からして、確率 は五分と五分だ。本当に過去である可能性もあるし、もしかしたらまったく別の世界かもしれない」 「でも、その声は『すべてのカギは過去にある』とか言ってた。それは何なんだろう」 新たな疑問が浮かび上がった。これに対しては、クラウドが解説するように説明した。 「たぶんその『カギ』というのはこの先に行けばわかるはずだ。これまでの疑問がすべて解決するだ ろうと俺は思う」 「なんで?」 「思わないか? 出来すぎている。俺達が街に姿を現し、探索をする。そして事件が起こった。そこ では街が廃墟と化し、俺達は救助にあたった。それからあの市場にいた人物から、こっちの方向に行 くように言われた。つまり、だ」 「つまり・・・何?」 「その市場に居た人物は、恐らく俺達が来る事を知っていて、案内をした。なぜなら、他の市場の奴 らは俺達にまるで関心が無かった。自分たちと全然違う格好をしているにもかかわらず、だ」 「待ってよクラウド。全然わからない」 「だから、道を俺達に教えたあの人物は恐らくこの時代の"あの声の主"か、それに近い何かだ」 「何でこの世界に"あの声の主"がいる、っていうのがわかるの?」 「わざわざ俺達をこの世界に送り込んだんだ。そしてこの世界で俺達に何かをしてほしい。そう考え たら、その声の主がこの世界にいるのは当然だ。たぶんその声の人物、そいつは」クラウドはためら いつつ、なぜか間をとった。「神に近い存在だ。過去の事も未来のこともすべてを知る。そしてそい つが、あの市場の人物をあやつり、俺達に道を教えた」 これまでずっと黙っていたジタンが、クラウドに言い放った。 「・・・無茶苦茶な理屈だ。ありえない。それが全部合っているとでも思うのか?」 「わからない。だが、行ってみればわかるはずだ」 三人はいつの間にか市場の人物に指さされた街に到着していた。ジタンはあの人物が指で作ってい た『1』の数字を思い出した。 「一番目に見える所に行け・・・って言っても、建物、いろいろあるけど・・・」 リンクも探していた。あの人物の『1』。そうして・・・あの丸を描いていたジェスチャー。 「あ・・・!わかった。あの人確か、大きな丸を作ってたよね」 「それがどうしたんだ」 「たぶんあれは、『一番大きな建物に入れ』っていう意味だよ」 「・・・そうか!なるほどなー。ここから見える中で一番でかい建物と言えば・・・これか?」 ジタンは、石のカベで覆われた家を指差した。大きいと言っても、どちらかといえば中規模な感じ だった。 「入ってみるか? ジタン」 クラウドは、その家を見ながら訊いた。どうやらクラウドは、屋根にある鳥の彫刻が気になるらし い。 「ああ。まあ違ってもしょうがない。とりあえず、訊いてみよう」 ジタンはその家の扉を軽くノックした。 ←第三章 集結−6 第四章 救済−2