* 「・・・あ!目を覚ました」 目を開けると、誰かが顔を覗き込んでいる。黒い髪の女性だ。リンクはすぐにダガーだとわかった。 「ゼルダ!リンクが目を覚ましたわ」 ダガーは髪をかきあげたあと、ゼルダの方へ振り向いて言った。すると間もなく、ゼルダがやってきた。 今まで何してたんだろうとリンクは思ったが、しゃべることさえも今は疲れてて面倒くさいのでやめた。 でも気になることがあった。自分はどれくらい気を失ってたのだろう。 「ねえ・・・どれくらい寝てた?」 ダガーが時計を見てから言った。 「そこまで寝てたわけじゃないわよ。あなたが気絶してから・・・そうね・・・」ダガーは視線を部屋に かけられていた時計の方に移した。「大体二時間くらい? すごい回復力だわ」 リンクはだいたい自分はいつから寝ているかさえもわからなかったが、時計を見て計算しようとした。 しかし頭があまり働かないので、ダガーがどこの時計を見ていたか忘れてしまった。 ゼルダが少し笑ってから、 「あれよ、あれ」ゼルダは指をさした。時計は、リンクが寝ていた部屋のドアの上にあった。 今は午後二時三十三分。ということは・・・と、リンクは計算を終えた。少し背を伸ばしていたリンク は、もう一度ベッドへもたれかかった。ここで、単純な疑問が浮き上がった。 「なんで気絶したんだっけ」 ダガーはまだ少し心配そうな表情をしていた。ここで、ゼルダがリンクに話しかけた。 「リンク、あなたはガノンドロフと戦ったわ。そこまではおぼえてる?」 「ん・・・? ああ、うん」リンクは急いで記憶をたどっていた。 「そして、あなたはガノンドロフと戦い、とどめをさした」ゼルダはリンクの表情をうかがいながら続け た。「そのあとに、ガノンドロフが消えた後、あなたも気絶してしまったのよ」 「え? なんでだろう」 いつもの調子で話し始めたリンクを見て安心したダガーは、リンクの髪をなでながら言った。リンクは 少し恥ずかしがり、頭を引っこめようとした。 「あなたはすべての力を使い果たしてしまったのよ。たぶんね。それでも二時間で目を覚ますなんて、た いしたものだわ」 リンクは少し頭をかいた。そうかなあ、と、また少し照れた。 ある程度会話を交わしたあと、リンクのお腹が鳴った。 「あ・・・れ・・・?」リンクは少し脱力感を感じる。 「もうお腹すいちゃったの?」ゼルダがクスクス笑う。 「・・・そうみたいだ。何か食べたいな」と、ここでリンクがゼルダに目を向けた。まさに何か食べ物を 求めている目であった。 「え・・・。じ、じゃあ、すぐに用意するから。なにがいい?」 リンクは天井を見上げながら考えていた。天井になにかあるのかなとダガーが見上げてみると、昼食ま えにダガーがリンクに教えた"シャンデリア"だった。この城にはいくつこれがあるのかと、ダガーはまた 気になってしまった。 「あのおいしかった冷たいやつ・・・何だっけ」 「・・・冷たいやつ?」 「そうそう。キンキンに冷えたやつ。あの白い・・・なんだっけ」 ゼルダはああ、と合点した。 「『アイスクリーム』ね?」 リンクはなにか感心するようにへぇ〜、と言ったあと、 「あれアイスクリームっていうのかあ。じゃあ、それちょうだい」 軽くいいつけるリンクに、ゼルダは少し反発してみた。 「もうちょっと良い言い方できないの」 「あ・・・ごめんごめん」 すると、ゼルダは笑いながら、 「冗談よ、冗談。すぐ持ってくるから、待ってて」 ゼルダはささっと部屋を去り、アイスクリームを取りに行った。 リンクはベッドからおりた。そうしてから、じっとマスターソードを見つめた。少しまだ疲れが残って いるのかと思ったダガーだったが、話しかけてみた。 「ねえリンク」 少し間があった後、リンクが振り返った。どうやら、まだ眠いだけらしい。 「その剣、どういう剣なの? ガノンドロフをあっけなくやっつけちゃったけど・・・」 リンクがマスターソードを鞘から抜いた。鋭いつるぎの音がした。 「これは・・・『退魔の剣』と言われてるんだ。文字通り、悪い魔力を持ったやつを倒すことができる剣」 「・・・ふ〜ん。なるほど、『退魔』かぁ・・・。意味がイマイチよくわからなくて」 「あとこれ」 リンクは手を上にあげ、片方の手で、腕をつかんだ。力を込めている。 「うわっ・・・・・・!」 リンクの手から、いや、手の甲から飛び出したものを見てダガーは驚いた。まさかとは思っていたが、 このトライフォースというものが本当に人の手に収まっていたのだと思うと、びっくりだ。トライフォー ス、三つの聖三角はくるくると宙で回っている。 「すごーい・・・。これがトライフォース?」 「うん。これが、あの光の女神がいってたヤツだよ」 と、ここでゼルダがトレイにアイスクリームを乗せて持ってきた。あっ、と言って、 「トライフォースね?」 と言いながら、トレイからアイスクリームをとり、近くのテーブルに乗せた。カチャ、と音がしたので リンクはアイスを見ると、茶色をしていたので驚いた。 「うん・・・そうだけど・・・。アイスクリームって白色じゃないの?」 「えっ・・・? リンク君、『チョコレート』って知らない?」ダガーが質問を質問で返した。 リンクにとっては真面目に訊いたつもりで、素朴な疑問であったのだが、まるでそれが当然のごとくま た質問をされたので、少し困惑した。 「知らないよ」 なんか自分が何も知らないようでバカバカしくなってきたなとリンクは感じた。そんなリンクに、ダガ ーは説明を始めた。 「『チョコレート』っていうのは、アイスの味の一つなのよ。もちろん、他の食べ物にもこの『チョコレ ート』味のものがあるわ。今日のお昼に食べたあのアイスは『バニラ』味っていうのよ」 リンクは、う〜ん、と唸ったが、 「まあいいや。おいしけりゃ何でもいいし」 二人がこのセリフで、脱力感を感じたのは言うまでもない。 リンクがアイスクリーム(チョコレート味)を完食したあと、ゼルダから提案があった。 「あ、そうだ。リンク、私の父上と稽古してみない?」 口についたチョコレートをティッシュでぬぐっていたリンクは、頭の上に疑問符を浮かべ、 「え? 何の?」 「剣の稽古。インパに頼んでもよかったんだけど、今いないの」 「お、王さまと稽古!? 剣の!?」 リンクは意表を突かれた。いくらなんでもまともにやりあって王に勝てるわけがないと思った。が、自 分はガノンドロフをついさっき倒したばかりか、なぜか互角にやりあう自信があった。 自信満々になっているリンクを見て、ゼルダが言った。 「あ・・・。先に言うけど、テクニックじゃなくて・・・」 「テクニックじゃなくて?」 「剣のパワーの使い方の練習。 たぶん、あなたが倒れたのはマスターソードのパワーを限界を突破して 使いすぎたからだと思うわ」ゼルダは少しうつむいた。「でも、それのおかげでガノンドロフは倒せたの だと思うけど・・・」 「・・・わかった。頑張ってみるよ」 そんな時にダガーは、リンクとガノンドロフの戦いを思い出していた。それにしてもガノンドロフはあ ってけなくやられてしまったが、それほどまでにあの"マスターソード"という剣は強いのか? それにあのリンクの言動の変貌ぶり。感情的になるとあれほどまでに大人と互角に戦えるのかと思うと、 未来に希望が見えた。 ダガーはそんな事を考えつつ、リンクとゼルダについていき、中庭へ向かった。 * 高くそびえるその塔は、空を突き抜けるかのように立っている。 果てしなく神殿の階段を上っていたティファとジタンは、やっとの思いで最上層に入り、ついに最上階 と思われる場所へたどり着いた。 「あっ・・・あれね・・・?」ティファは指さした。スカートの上から膝に手を突き、息を切らしたまま 言った。 ジタンはティファの指が示した先を見た。 「・・・・・・クリスタルだ・・・」 ジタンとティファが見つめるもの。それは、すさまじいほどの輝きに包まれた魔力を持つ水晶、クリス タルであった。 ジタンはかなり疲れているティファに声をかけた。 「大丈夫か、ティファ」 「え・・・ええ。大丈夫」 「よし」ジタンはティファの顔色を見るために膝をついていたが立ち上がり、クリスタルのところへ向か った。 クリスタルに手を伸ばした時であった。妙な感覚が、ジタンとティファの脳を支配した。 「うっ・・・!? これは・・・?」 ジタンが膝をつき、頭をかかえて苦しそうにしている。ティファもその何かの攻撃とも言えるほどの感 覚を受けた。 「なに・・・これ・・・」 激しい頭痛が襲う。立ちくらみも同時に起き、立っていることが困難になった。ティファも座り込んで しまう。 声が響いた。 『クックックッ・・・』 ティファにとって聞き覚えのある声であった。 『クリスタルは私が頂く』 「くっ・・・これは声じゃない・・・頭の中に直接言葉が・・・」ジタンは頭痛に耐えながら言った。 ジタンが言った直後だった。最上階の入口に誰かが現れた。長髪で黒い服に身を包んでおり、肩あてを していた。 「おまえは・・・!?」やっとの思いで頭痛から解き放たれたジタンが訊いた。 「・・・・・・・・・」 その男は答えなかった。 ティファは口を手で押さえている。驚愕・・・、いや、その言葉を越えているほどの驚きの仕草であっ た。ティファはジタンに何らかのアクションを起こそうとするが、体が金縛りにあったかのように動かな い。 「どうした・・・? ティファ。フム・・・無理もないか。私は・・・」 男は言葉を切った後、剣を取り出した。そしてティファに向かって振り下ろした。 「きゃっ!」 やっとティファの体が動いた。とっさにティファは地面を蹴り、後ろへ下がり、同時に倒れこんでしま った。確実に身の危険を感じたジタンが駆けつけてきた。 「大丈夫か!? ケガは!?」 ジタンはティファの体を揺すった。腕に少し傷がある。 「・・・大丈夫よ。それより・・・」 ティファは切りつけようとした長髪の男に目をやった。 その男は、未だ振り下ろしたままであり、少しも動じていない。ありえないくらい長い剣で、どこから 取り出したのだろうとジタンは思った。 しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。ジタンはティファの身を案じながら言った。 「おい、お前・・・!」 「何だ」 「何者なんだ・・・お前は・・・!」 「・・・・・・」 なおも男は答えない。 「オレの質問に答えろ!」 「・・・・・・人々は私の事を」突然、その男は剣を構えた。「セフィロスと呼んでいた」 「・・・いた?」 「私は息絶えたソルジャークラス1st」セフィロスはなおも構えている。いつかかってくるかわからないの で、ジタンは覚悟をしながら聞いている。「クラウドによって6年前に倒された」 「クラウド・・・!? お前はクラウドを知っているのか!? クラウドによって・・・倒された?」 「6年前、私とソルジャークラス1stのザックス、一般兵二名でニブルヘイムの魔晄炉(まこうろ)へ向かっ た。そして私は真実を知り、やるべきことを発見した」 ジタンは不覚にも、セフィロスの話に聞き入ってしまっていた。 「私がニブルヘイムを襲撃した後、一般兵であったクラウドは私に復讐しにやってきた。魔晄炉へな。我 ながらあれだけは不覚であったな」セフィロスはここで刀をおろした。「ザックスの剣で私は体をクラウ ドに貫かれた。そして私はクラウドに反撃を図った。が、魔晄炉の奥底へと転落してしまったのだ」 ジタンは頭脳をフル回転させていた。その出来事についてはいいのだが、疑問がひとつ残る。 「『やるべきこと』ってのは・・・?」 「精神エネルギーが豊富な土地"約束の地"へと、私のコピー達は目指していた。真実を知らなかった頃の クラウドはひたすら"私"を追い続けた」 「・・・・・・」 「北の大空洞で私の"本体"が眠るところへ来たのは結果的にクラウドだけであった」 ジタンは少しだけ首をかしげた。 「・・・そのコピーってのをそこへ向かわせたんだろ。なんでクラウドがその内に入ってるんだ」 「・・・もういいだろう」 「・・・良くない」 「・・・そこまで知ることに必要性もないはずだ」 「・・・いいや」 「・・・ふん」 セフィロスは刀を再び構えた。長い銀髪が少しだけ揺れる。 「ならば死ぬか。言っておくが、私は普通の人間ではない」 「・・・そんなことを言って動揺すると思うか?」 ジタンは短刀を取り出した。するとここで、ティファが立ち上がった。 「ジタン・・・。私も戦うわ・・・」 「ティファ・・・本当に大丈夫か?」 「心配しないで」 ティファは構えた。ジタンは少し驚いた。 「素手なのか?」 「ええ。こう見ても私は―――」ティファはセフィロスに向かって走り出した。 ジタンが最初から予感していたとおり、戦いが始まってしまった。しかしさすがのジタンも、この戦い が中層で休んでいるエーコにまで関わるとは思っていなかっただろう。 ←第三章 集結−3 第三章 集結−5→