* 「では、私がトライフォースを」 「ああ。奴らがその『時の扉』を開けた時の隙を見つけ、トライフォースを手に入れるのだ」 邪神はセフィロスを送り出した後、ガノンドロフに命令を出していた。なかなかセフィロスは螺旋神殿 に到着ができていないようで、どうやら自分のテレポーテーション魔法の効き目が弱かったのだろうと少 し自分に腹を立てていた。完全にここから、下界の神殿までセフィロスがワープできるまでまだ時間がか かるのか。 「わかりました。確実に奪い取ってみせます」 ガノンドロフは真剣な表情から少し気を抜いた表情に変え、そういえば、と言って続けた。 「セフィロスはどうしたのです?」 普段からは考えられないほど敬語を使っているガノンドロフである。 「先にワープさせた。クリスタルを手に入れるために」 「・・・では、本当に融合するおつもりなので?」 「・・・ああ」 ガノンドロフは壁にかけてあった皇帝の剣、エンペラーソードを手に取り、腰につけた。 「そういえばガノンドロフよ、傷跡は大丈夫か」 ガノンドロフは、クラウドに傷をつけられた背中を少しさわった。 「なんとか。あいつにも復讐をしてやりたいですな」」 ガノンドロフはあいつと戦わせてくれ、と言わんばかりの目で、邪神を見た。 「そうあせることもない。私が・・・いや、私達が完全なる復活を遂げれば、お前たちにも今以上の魔力 を与えよう」 ここでまた、ガノンドロフが質問をした。 「クジャのやつは?ここのところ見ていませんが」 邪神は、ふん、と鼻を鳴らした。どうやらイラっときたらしい。 「知らぬ。クジャのことだ。おそらくあいつの方へ向かったのだろう。もうここは飽きたのかもな」邪神 は表情を変えずに進めた。「まあ向こうは向こうだ。十分働いているのならばよしとしてやろう」 ガノンドロフはその言葉を聞くと、邪神に出発をすると言った。 「わかった。では送るとするか。ハイラルへと」 * リンクはすぐにたくさんあった豪華な料理(ローストビーフ・ホタテのカルパッチョ・にぎり寿司(大ト ロ5貫くらい)・ライス・ハンバーグ・アイスクリーム)を平らげてしまった。しかしダガーはそんなこと よりも、この城にはどのくらいコックがいるのだろうと少し気になった。 昼食を終え、ダガーが召使いにお礼を言ったあと、さきほどのホールのようなところへ戻った。 「おいしかったねー」リンクがお腹をさすりながら言う。 「ええ、そうね」 ふたりはボーッと突っ立っていたが、ゼルダがやってきた。息を切らせながら走ってきて、リンクが見 覚えのあるオカリナを差し出した。 「これ、時のオカリナ」 ゼルダはリンクに受け取ってと言わんばかりにオカリナを突き出し、リンクは生返事をした。 「ふう・・・」 ゼルダは息を整えた。この様子だと、まだ昼食は食べてないんだろうなとリンクは思った。 「さあ、行きましょ」ゼルダが歩きはじめた。リンクがとっさに止めた。 「ね、ねえ、ご飯食べてないんでしょ?僕達待ってるから・・・」 「いえ、大丈夫」ゼルダは笑顔を見せて、リンクの目を見て続けた。「一刻を争う状況なんです」 ダガーが虚を突かれた表情をした。 「えっ、どういうこと」 「ダガーさんをさらった悪党・・・いいえ、魔王、ガノンドロフが・・・時の神殿に・・・」 その時、リンクの目の色が変わった。 「え!?もうガノンドロフは時の神殿に!?」 「いいえ、まだ向かっている途中です。わかるのです、私には・・・あの男の邪悪な気が・・・」 ダガーはゼルダの顔色をうかがっていたが、立ち上がった。よし、と言って、 「じゃあ、早く行きましょう!」 三人は急いで時の神殿へ向かった。 「ふう・・・・・・」 安心した息をはいたのはリンクだ。まだガノンドロフは来ていなかった。リンク達は固い石のカベで閉 ざされた『時の扉』の前の台座に、ゼルダがオカリナと一緒に持ってきた三つの『精霊石』をささげた。 「リンク、時の歌を吹いて」 リンクは急いでオカリナを取り出した。しかし、リンクは吹こうとするが、途中でやめてしまう。 「どうしたの?」ゼルダは心配の色を見せる。ガノンドロフが近付いてきて焦っているのだろうかと、リ ンクは思った。 「・・・わすれた」 「・・・・・・時の歌を?」 「・・・うん」 ゼルダは少しうんざりしてしまったが、リンクからオカリナを取り、オカリナを口につけて時の歌を奏 でた。 やわらかいメロディが神殿に響き渡る。 それを楽しんだのもつかの間、時の扉が開き、扉の上にあるトライフォースが輝く。トライフォースは 間もなく実体化し、リンクたちの前にあらわれた。 「やった!開いた!」 その時だった。 後ろからエネルギー砲が高速で近づき、それを感じ取ったリンクは間一髪かわした。 「ちっ・・・はずれか」 時の神殿の入口から、邪悪な気を放つゲルド族の男、ガノンドロフが現れた。 「久しぶりだな・・・ゼルダ姫様」 「・・・・・・・・・!」ゼルダは予期していたのだがさすがに驚き、言葉を失った。 ガノンドロフが足音をたて、近付いてくる。トライフォースはすぐそこだ。 「さあ・・・そのトライフォースを渡してもらおうか」 トライフォースは、エネルギー砲を避けた後のリンクの目の前にある。知恵、力、勇気が宿った聖三角。 「・・・・・・渡すものかっ!」 リンクはトライフォースに触れようとした。しかしなぜかガノンドロフが止めた。リンクも反射的に動 きを止めてしまう。 「おっと、待て。そのままトライフォースを渡してくれたのなら、貴様たちの命は助けよう。もしもトラ イフォースにお前が触れてしまえば、お前の手に宿るトライフォースはお前を殺さねば出てこない・・・。」 リンクは迷っている。さらにガノンドロフは続けた。 「さあ・・・どうする。トライフォースを渡して生き延びるか、それとも手に入れた直後に殺されるか」 ここで、今まで言葉を失っていたゼルダが口を開いた。ダガーは、その状況を見ているだけでせいいっ ぱいのようだった。 「リンク!死んじゃだめ・・・!・・・悔しいけど・・・トライフォースをガノンドロフに・・・!」 リンクはなおも両手を強く握り、少し構えた感じで立っている。 そしてリンクの手が動いた。 リンクはトライフォースに触れた。 まもなくトライフォースが光り輝いて、リンクの手の甲に収まった。ガノンドロフは不意を突かれた表 情だ。 「き・・・貴様・・・!?」 「お前の言うことなんか信用できるか!俺は・・・俺は・・・可能性にかける!」 ダガーは驚いた。リンクが一人称として『俺』と使うことがあるんだなとか、いろいろな意味で。 間もなくリンクは時の扉の奥へ消えた。 「あいつ・・・何を考えている・・・!?」 ガノンドロフは浮遊し、時の扉へと向かった。しかし、ゼルダがとっさに道を防いだ。リンクがトライ フォースを手に入れてしまったことに困惑していたが、リンクの『可能性』というものにゼルダもかける ことにしていたのだった。 「あなたにはトライフォースは渡さない!」 「どけ・・・小娘」 激しい平手打ちをゼルダに浴びせた。ゼルダは吹っ飛ばされ、大きな音を立てて壁にぶつかる。 「あっ・・・・・・!」今まで言葉を発しなかったダガーだったが、ゼルダが殴られる姿を見て、怒りが こみあげた。 「なんてことするのよ!あの子は・・・」 ガノンドロフはフン、と鼻をならすように笑った。 「子供だからだというのか?それがどうしたというのだ・・・」 そう言うと同時に、ダガーにも殴りかかった、が、その時、リンクが戻ってきて、さらにガノンドロフ に蹴りをくらわせた。 「はあっ・・・はあっ・・・!」 ダガーは思わずバランスを崩し、しりもちをついてしまった。リンクを見上げる形で。リンクの額には、 わずかながら汗が光っていた。 「好きにはさせない・・・!」 リンクの手には、大きな剣が握られていた。トライフォースの印が刻まれた剣、マスターソードが。 「な・・・なぜ・・・?」 ガノンドロフはかなり驚いている。それもそのはずだった。今リンクが持っているマスターソードは、 "子供のままのリンク"ではまだ扱えないはずだったのだ。 「十分僕は成長した・・・!人間としても・・・勇者としても」リンクはそう言ったあと、神殿の床にマ スターソードを突き刺した。「お前をたおす!」 ガノンドロフは戸惑っていたが、すぐに落ち着きを取り戻した。ゼルダは気絶している。ダガーは状況 を理解するだけで精一杯であった。 ダガーは、なぜガノンドロフはリンクがあの剣を持っているだけで驚いているのだろうと不思議に思っ ていた。なんてことなさそうな、普通の剣であるが・・・? 「いいだろう。かかってこい、小僧」ガノンドロフは、かつてリンクに傷をつけた剣を鞘から抜き、片手 で持った。 リンクはマスターソードを床から抜いて両手で持ち、走った。ガノンドロフはなおも動かず、立ちつく しているまま。ガノンドロフの目の前まで来たリンクは、思いっきりジャンプした。 「!?」ガノンドロフは少し驚いた。そのまま体に向かって突き刺してくると思ったからである。 リンクは飛び上がると、剣を振りおろした。すべての力を剣に集中させると、マスターソードが輝き、 光に包まれる。 その瞬間、激しい剣と剣のぶつかる音が響く。ガノンドロフはマスターソードを自分の剣で受け止め、 リンクの攻撃に耐える形になった。 「ぐっ・・・・・・!」ガノンドロフは少し身をよろめかせる。 「うう・・・・・・っ」リンクは力を込めつつ、体重を前にかけた。さらに剣に力が加わる。 ふたりが剣で力比べをしている時、ゼルダが気がついた。神殿の入口にいる、あの剣をもったふたりは なんなのであろうかと認識するのに時間がかかった。 と、ここでダガーがゼルダに駆け寄ってきた。 「だいじょうぶ?ゼルダ」 「は・・・はい・・・。あの・・・ふた・・・りは・・・?なぜリンクがあの剣を・・・?」 ダガーは少し答えに迷った。なぜゼルダまで不思議がるのかがわからないからである。 「あなたも?リンクがあの剣を持っていると、何か不思議なの?」ダガーは素直に質問する。 「そ・・れは・・・あとで」 ダガー達が会話していると、リンクとガノンドロフに動きがあった。ガノンドロフは自分の力でリンク を吹き飛ばした。しかしリンクはうまく受け身をし、立ち上がる。ガシッ、という音をたてて、マスター ソードは床に刺さった。 「くそっ・・・・・・!」 ガノンドロフが足音をたてながら近付いてきた。 「く・・・今のはさすがにこたえたな。剣の力とトライフォースの力を借りているとあって、あれだけの 潜在能力が引き出されるとは」 リンクは、疲れた表情から少し意表をつかれたように表情を変えた。 「トライフォースの・・・力? そんなものが戦いにも?」リンクはガノンドロフを見上げながら言った。 「・・・とぼけるな。今貴様はトライフォースの力も借りていたはずだ。でなければあれだけ時間がかか るとは思えん」 リンクは立ち上がった。すぐ近くに突き刺さっていたマスターソードを抜いた。そして小さく首を横に 振り、なぜかリンクは少し笑って見せた。 「そうか・・・トライフォース・・・僕は剣の力だけで・・・フ・・・忘れてたよ」リンクはマスターソ ードを下におろしたまま握った。 「なにがおかしい?」 「存分に利用しよう。古代の神々が封じ込められた力を・・・!」 リンクは言葉を切った後、空気を裂くかのように剣を上に突き上げた。そして何かに取りつかれたかの ように、目を閉じて言葉を発し始めた。 「古の伝説よりつたわる古代の神々よ・・・もう一度、我に退魔の力を・・・!」 マスターソードから光が放たれた。目を閉じていたリンクは大丈夫であったが、他のガノンドロフ、ダ ガー、ゼルダは反射的に目をつぶってしまった。 光が放たれてから数秒後、うめき声が聞こえた。ゼルダとダガーは何かと思ったが、あまりのまぶしさ に目を開けられない。 だんだん目が見えるようになってきた。神殿の床、たった一枚のカーペット、精霊石、開いた時の扉。 ひとつづつ確認していたダガーは、リンク達の方に目を向けた。 「うが・・・・・っ・・・!」 「・・・・・・」 ガノンドロフはそのまま立っているが、なぜかリンクがガノンドロフの背後にいた。ガノンドロフは腹 を押さえ、苦しんでいる。 「・・・終わりだ、ガノンドロフ」 ガノンドロフはなおも立っていたが、ついに膝をついた状態になった。立てないのである。それもその はずだった。 「ぐ・・・はっ」 ガノンドロフの腹から、赤黒い液体が落ちた。しかしマスターソードには、その液体が一滴もついてい ない。 リンクはマスターソードを、背中にある鞘にしまってから言った。 「お前は・・・僕にヒントをくれた。いいや、答えを。トライフォースの力。お前はわからなかったのか もしれないが、さっきの剣の力比べは、僕は剣の力しか引き出していない。トライフォースなど、忘れて いたんだ」リンクは振り返り、ガノンドロフを見て続けた。「お前を倒すことしか頭になかったために」 ダガーは、リンクの言動の変貌ぶりに驚いていた。 ここで突然、ガノンドロフの体が少しずつ薄れていきつつあった。 「な・・・なんだ・・・・これは・・・!!」 リンクは言ったはずだ、と口にした。 「僕は退魔の力を剣に宿してお前を斬った。トライフォースの力を借りて。だから、"その"攻撃を受けた お前はもうこの世界にはいられない。"退魔"の意味はわかるだろう?」 ガノンドロフがどんどん消えてゆく。そして、最後の言葉を口にした。 「オレの負け・・・か・・・。小僧よ・・・なぜお前は・・・。世界を・・・救う?」 リンクは答えない。リンクはずっとガノンドロフを見つめたまま、どこかすっきりしない表情だった。 「ふっ・・・だが、お前は・・・もっと多くの苦難にあうだろう・・・覚悟を・・・するん・・・だな」 ガノンドロフは消え去ってしまった。落ちていた『皇帝の剣』も、後を追うように。 ←第三章 集結−2 第三章 集結−4→