*

 ここは遥かなる空の上、邪神は塔を創設した。

「では、そのクリスタルとやらを手に入れれば」銀髪の男は続けた。「魔力がよみがえるというわけか」
「ああ。ぜひお前には活躍してもらいたい」邪神は"その"男にある任務を申しつけていた。
 ついにあの伝説の英雄が蘇った。これであの勇者たちに対し、三人を送り込むことができる・・・。こ
の銀髪の男は人間の力を超越し、桁外れな能力を持っている。
 邪神は心の中、いいや、この邪神には心などそもそも存在しないのだが、勝利を確信していた。この男
がいれば、ガノンドロフやクジャがいなくともあの三人を葬り去れるだろう、などと思っていた。
 
 ちなみにその任務とは、下界に存在する魔石・クリスタルを奪ってくるというものだった。クリスタ
ルはありとあらゆる生命の知識が封じ込められ、ぼう大な魔法力を秘めている。
「わかった」その男は床に置いてあった剣を取り、数回振った。「場所は?」
「下界の螺旋神殿だ。そこにあのいまいましい勇者どもも来るはずだ。まあセフィロス、お前なら数秒
で殺れるだろう」
「・・・無駄な戦いはしたくないのだがな」セフィロスは少しうつむきながら言った。
「しかし、このままでは完全に我らとの接触が断たれてしまう。そうなれば我々は生きるすべがない。
なんとしてもあの勇者どもを打ち崩し、世界を我らの手に手に入れるのだ」
「・・・・・・」
「神殿までは私が送り込んでやろう」
 邪神は手の平をセフィロスに向け、呪文を唱えだした。
「何度も確認するようだが、クリスタルを取ってこればいいんだな」
 邪神は虚を突かれたような顔をして呪文を中断したが、すぐに答えた。
「ああ」
 その数秒後に、セフィロスは魔法によって消えた。


「・・・・・・」
 セフィロスを送り込んだあと、邪神は考えていた。1800年前のこと―――いや、彼にとってはついこ
の間のことなのだが、引っかかっているものがあった。
 それは、外見。三人とも髪型、身長、すべてがほとんど同じなのである。1800年前の勇者と、ジタン、
クラウド、リンク達の外見が。
 これだけは謎に満ちていた。
 邪神は考えを巡らせた。もしかしたら過去からの使者で、過去の記憶をすべて消され、過去から未来
へ送り込まれたのか?そうしたら、1800年前で、あの勇者たちに一度封印されていることになる。
 しかしそうしたら、あの勇者共のいままでの冒険の記憶はどうなる?そうなると、やはりその説は考
えから削除するほかはない。いや、その逆は・・・。
 
 初めて何とも言えない不安が邪神を襲った。自らがこれから世界を恐怖で覆い尽くすつもりなのにと。

                      *

「やっと着いた」
 クラウドは、独りごとを呟いた。海を渡り、ボーンビレッジという採掘業が中心の村を抜け、『忘ら
るる都』へと到着していた。
 クラウドとその他の一同は、あの会議の後に夕食を食べ、リンドブルムで一晩休んで、すぐに出発し
た。
「さーてと、どこへ行くか。・・・まあ、その『聖のマテリア』っていうのがあるとしたら、あそこし
かないだろう」
 クラウドは少し都の探索をした。
 最初に訪れた時から変わっていない。壊れた巻き貝の家、宿など、そのままだ。クラウドは民家と思
われる家に入り、"古代種"の文字で書かれた本を見つけた。
「・・・・・・」
 クラウドは本を閉じ、そのままにしておいた。

 クラウドは"青い回廊"へ向かった。無駄な体力消費はよして、早く聖のマテリアを見つけようと思っ
た。
 死んでしまったエアリスの身体を、星に帰した場所。
 あの光の女神が言っていた言葉。『あの空間はあなた以外の者を受け入れることができないのです』。

 以前この"青い回廊"に入った先の"水の祭壇"には、普通にクラウド以外でも入ることができた。なに
か特別な力が働いているとでも言うのか。
 クラウドは"青い回廊"にある貝の建物に入った。螺旋状になっており、上に行くと、どこからともな
く光の階段が現れた。クラウドは初めの一歩でそれが実体化していると確かめ、慎重に下りていく。
 
 ついにたどり着いた、この空間。エアリスが殺された場所、水の祭壇。
 一年前、セフィロスのコピーによって殺されたエアリス。エアリスは究極の破壊魔法メテオと対をな
す、ホーリーを唱えるためにここにいた。セフィロスによって命を奪われたが、ホーリーをすでにエア
リスは唱えていた。
 水の祭壇にある柱を乗り継いでいき、やっと祭壇についたクラウドは、台座を見つけた。光り輝くマ
テリアがある。
 ちなみにマテリアとは、特殊なエネルギーを凝縮してできた魔法の玉である。しかしこれは、自然の
神秘がつくりだしたものに違いないと、クラウドは見るだけでわかった。
 そのマテリアに手を伸ばそうとしたところだった。後ろに気配がしたのでとっさに振り返った。

 ロングヘアーに大きなリボン。長い丈のワンピース。
「エ・・・エアリス・・・!?」
「クラウド、ひさしぶり」
 それはどこからどう見てもエアリスであった。まれに旅の記憶がよみがえり、夢に出てくることがち
らほらあった。
 しかし、エアリスの体は透けたりしていない。クラウドは驚くばかりだった。
「世界、また大変なことになってるね」
「・・・ああ、そうだな」
「クラウド、自分を見失わないで。またクールになっちゃったら、前のクラウドと同じ」
 意味深な言葉であるが、これは事実だった。クラウドは親友の記憶をフラッシュバックし、自分がソ
ルジャー・クラス1stだと思っていたが、本当は神羅カンパニーの一般兵だったのであった。
「・・・ああ。わかった」クラウドは頷いた。
「私は・・・本当のことすべて知ってるんだ」
「え?」
「この事態の真実・・・裏も表も、すべて」
「何で知ってるんだ」
「星が・・・教えてくれるから」エアリスが上を見上げ、手を後ろにやりながら答えた。
「いいな。古代種ってのは」クラウドも腕を組み、上を見上げた。
「いいえ、これに古代種は何も関係ない。次にあなたたちが何処へいくのかも知ってるし・・・」
 ここで、クラウドが言葉を切った。
「?・・・海底神殿じゃないのか」
「ひみつ。私達、死んでしまった人間は未来も過去も自由に見ることができる」
「ふうん・・・」
「・・・あ、一回死んでみようかと思ったでしょ」
「・・・バレたか」
 水の祭壇に笑いがこだました。
「ふふっ、久しぶりに話せて楽しかった」エアリスはふたたび笑顔になった。
「ああ、俺もだ」
「クラウド、これ」そう言ってエアリスはリボンを取り、クラウドに差し出した。
「なんだ、もらっていいのか?」
「ううん、ちがう。これからあなたはいろんな困難に会う。その時のための、お守り」
 クラウドは受取り、大切にしまった。
「わかった。・・・ありがとう」
「そう、そう。素直に接すればいい。仲間のみんなにもそうやって接すればいいのに」
「いや・・・それはだな」クラウドは頭をかいた。「まあ、受け取っておくよ」
 その時、エアリスの体がかすれ始めた。何が起こったのだろう。
「あ・・・もう時間みたい」
「そうか」何の時間かクラウドは一瞬戸惑ったが、クラウドは一度、聖のマテリアを見てから言った。
「どうだ?天国ってのは?何かと不都合とかありそうだけど」
「だいじょぶ、だいじょぶ。心配しないで。変な話・・・クラウドが死んじゃったら、また一緒に冒険と
かしたいな・・・約束してくれる?」
「ああ、わかった。約束するよ」
 クラウドがそう言うと、エアリスはふたたび笑顔になった。エアリスの姿は少しずつ薄れ、ついに消え
てしまった。

 クラウドは聖のマテリアを手に取った。あっさりと手に入れてしまったどころか、エアリスと会えた。
もしかしたら、自分以外の進入を受け付けないのはエアリスによるもので、これが目的だったのかもしれ
ない。

                      *

 ジタンは塔を見上げた。こんな神殿があったのかと、少し呆れた。閉ざされた大陸に向かう際に見えな
かったのは、リンドブルムが塔と重なって見えなかったのだろうとジタンは思ったが、それにしても高す
ぎる。高さで言えば百メートルはあるだろう。
「うわ〜。すっご〜い」素直な感想を漏らしたのはエーコだ。
「時間がかかりそうね。ジタン」ティファは腰をひねったりしている。
「ああ。だがあきらめずに、登ろう。この上にクリスタルがあるんだ」

 ジタンは塔のカギを使って扉を開け、中に入った。階段がある。
 しぶしぶジタン達は階段を上った。少し階段で上がると、そのたびに広い部屋があった。ここを目印に
して、一階、二階と数えるんだなとジタンは察した。
 急いで上り詰める。が、やけに階段の段の数が多く、一段飛ばしなどで登ることができないエーコがい
たので、上るのにもテンポが悪い。
「おいおいエーコ、頑張れよ。一段飛ばしなんかコツ掴めばすぐできるぞ」
「い・・・いやよ。怖いもん」
 やっぱりいろんな意味で連れてくるべきじゃなかったなあと、ジタンはエーコに聞こえないように溜息
をついた。が、エーコがこちらを向いて、
「なに!?ため息なんかついて!」
 などと言われてしまった。どうやら耳はよくできているらしい。

 その後も、上り、上り、上って行った。が、三十メートルくらいしかまだ進んでおらず、エーコはとく
にクタクタだ。
「う〜。やっぱりお城に残ればよかった」
「ここまで来て何だよ。さ、行こうぜ。休憩は十分しただろ」
 ここでティファが反論した。
「もうちょっと休ませてあげましょうよ。エーコは子供なのよ?」
「・・・・・・」
 ジタンは反論しかえすことができなかった。なぜだろう、わからない、と、自問自答した。

 数十分の休憩の後、一同はふたたび上りはじめた。

 しかし、中層、五十メートルほど上ったところでエーコの体力が限界へと達したのか、「もうダメ」な
どと言って、座り込んでしまった。そこでジタンとティファは「ここで待ってて」と言い、不安はあった
がエーコを残して最上層を目指した。

 時間は刻々と迫る。クリスタルを手に入れるのは、ジタン達が先か、セフィロスが先か。

                      *

 こちらは平和なリンク達。ハイラル港へ船が到着してハイラル城へ向かい、今到着した。
「ひっさしぶりだなー。ここ」
「中へ案内します。リンク、ダガーさん、こちらへ」
 ちなみにダガーを『女王』と呼ばないのは、ダガーがそう希望したからである。
 
 リンク達は城内に入った。以前リンクはゼルダに会うため、城内に侵入したことがあるが、屋内に入る
のは初めてだった。上には豪華なシャンデリア、壁には絵画、床には赤いカーペット。
「うわ・・・まぶしい」
 ゼルダは笑みを漏らした。
「我慢して、リンク。私は時のオカリナと精霊石を持ってきます。もちろん、あの時の神殿の扉
を開けるための」
「うん、わかった」
 ゼルダはそう言い残し、奥の部屋へと消えた。というか、この城のホールだけでも扉の数が結構ある。
リンクはあっけにとられていた。
「リンク君って、お城に入るの初めて?」
「うん。アレクサンドリアもこんな感じなの?」
 ダガーは頬杖を立てながらいった。
「うーん、もちろん構造は違うけど、シャンデリアとかはあるわね」
「・・・?」
 リンクの頭に疑問符が浮かんでいる。
「え・・・?何かいま私、変なこと言ったかしら?」
「あ、いいや、シャンデリアって何かなーって思って」
 ダガーは、まあ、と言わんばかりに少し驚いた。
「リンク君、シャンデリア知らない?」
 リンクはすぐに首を横に振った。
「知らないよ。外国の食べ物かと思っちゃった」
 そのとき、リンクのお腹が鳴った。もうお昼かあと、ダガーは知らされた。
「ほら、上を見て」ダガーは天井を指差し、あれ、と言いながらつづけた。「キラキラしてるのがあるで
しょ」
「うん」
「あれが『シャンデリア』。天井からつり下げてあるのよ。まあ、お金持ちの家には多いわね」
「あ、まぶしいのはあれのせいか」
「そうよ」ダガーは頷いた。
 リンク達が会話をしていると、一人の召使いらしき女性が近付いてきた。
「リンク様、ダガー様。ゼルダ様のいいつけで、お食事をご用意中です。すぐにはお召し上がりにはなれ
ませんが、ぜひこちらへ」召使いはそう言って、食堂がある部屋を手で示した。
 リンクは飛び上がって喜ぶ。
「やったあ、お腹すいてたんだよね」リンクはダガーの手を引っ張った。「いこう、ダガー姉ちゃん」

「え、あ、ちょっと!」ダガーは手をひっぱられたまま、リンクに連れられてしまった。

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